疾患・状態

統合失調症

よみ:とうごうしっちょうしょう別名・英語表記:Schizophrenia

統合失調症とは、幻覚や妄想、意欲や感情の乏しさ、認知機能の低下などにより、考えや行動がまとまりにくくなる状態です。心理職は医療と連携し、心理教育や生活の支援を担います。

統合失調症とは、脳のさまざまな働きをまとめることが難しくなり、幻覚や妄想、意欲や感情の変化、認知機能の低下などが現れて、気分や行動、人間関係に影響が出る状態です。日本精神神経学会が2002年8月に「精神分裂病」からの呼称変更を決め、現在の名称になりました。

国立精神・神経医療研究センターの「こころの情報サイト」では、ほかの慢性の病気と同じように経過は長くなりやすいものの、薬や治療法の進歩によって、多くの人が長期的な回復を期待できるようになったと説明されています。

統合失調症の主な特徴

症状は、いくつかのまとまりに分けて理解されます。

  • 陽性症状: 健康なときにはなかった状態が現れるもの。幻聴などの幻覚と、被害妄想などの妄想が代表的です。本人にとっては現実そのものに感じられるため、病気の症状だと気づきにくいのが特徴です
  • 陰性症状: 本来あった力が弱まるもの。意欲の低下、感情の動きの乏しさ、人づきあいを避ける、身だしなみに構わなくなる、など
  • 認知機能の障害: 注意、記憶、物事の段取りといった働きが低下し、仕事や学業、家事に影響する
  • まとまりのなさ: 話が飛ぶ、要点がつかめない、行動に一貫性がなくなる

頻度については、世界各国の研究をまとめた報告(McGrath ら、2008年)で、生涯のうちに発症するリスクが中央値で1,000人あたり7.2人(約0.7%)と推計されています。決してまれな病気ではありません。発症の原因は正確にはわかっておらず、なりやすい要因をもつ人が、ストレスや人生の転機をきっかけに発症すると考えられています。

診断基準の細かな項目や期間は、DSM-5-TR や ICD-11 の原典で確認してください。

似ている状態との違い

幻覚や妄想、まとまりのなさは他の状態でも起こります。見立ての際には、次のような違いを意識します。

  • 気分症との関係: 重いうつ病や双極症でも、幻覚や妄想が見られることがあります。気分の症状との前後関係や強さを時間軸で確かめます
  • 解離やトラウマ反応: 解離やフラッシュバックによる体験は、内容や文脈が異なります。体験がどのようなきっかけで起こるかを丁寧に聞きます
  • 物質や身体疾患の影響: 薬物、アルコール、身体疾患や脳の病気が原因で似た症状が出ることがあります。医学的な評価が前提になります
  • 発達の特性による認知の独特さ: 感覚の過敏さやこだわりが、幻覚や妄想と誤解されることがあります。生育歴の確認が欠かせません

心理職が支援するときのポイント

統合失調症の支援では、医療が中心にあり、心理職は医師や看護師、精神保健福祉士などとチームの一員として関わります。診断や薬の判断は医師の領域であり、心理職は服薬の助言をしません。

アセスメントでは、症状の有無だけでなく、次の点を確かめます。

  • 幻聴や妄想の内容、本人がそれをどう受け止め、どう困っているか
  • 睡眠、生活リズム、食事、服薬や通院の状況
  • 気分の落ち込みや希死念慮。幻聴の内容が命令的でないか、自傷他害のリスクがないか
  • 仕事や学業、日常生活の力、支えになる人や制度の利用状況
  • 発症前後の経過と、再発の前触れ(眠れない、落ち着かないなど、本人なりのサイン)

面接で大切なのは、幻覚や妄想を頭ごなしに否定も肯定もしないことです。本人には確かな体験として感じられているため、「そんなことはない」と否定すると信頼関係が損なわれます。一方で、内容に同意する必要もありません。「それはとても怖い体験ですね」と、感じている恐れや困りごとに寄り添い、現実的な生活の工夫を一緒に探します。

話し方は、短く、具体的に、ゆっくりと。情報量を絞り、同時に複数のことを求めないことで、認知機能の負担を減らせます。急性期など症状が強いときは、心理面接は医療の方針に合わせ、無理に深めません。

よく使われる心理療法・アプローチ

心理社会的な支援は、薬物療法と並んで回復を支える柱とされています。実務でよく使われるのは次のようなものです。

  • 病気の仕組みや再発のサイン、薬の役割を本人と家族に伝える心理教育
  • 幻聴や妄想への対処を身につける認知行動療法的な支援。専門的な研修を受けた担当者が行います。基礎は認知行動療法の項目も参照
  • 対人場面での対処を練習する社会生活技能訓練(SST)
  • 家族との関係を整え、家族の負担を軽くする家族支援
  • デイケアや就労支援、福祉サービスなど、地域で暮らし続けるための生活支援

関わる際の注意として、本人のペースに合わせ、過度な刺激や負荷を避けます。回復の見通しや治療方針を断定せず、「主治医の方針を確かめながら進める」姿勢を保ちます。守秘義務や、危機時に情報を共有する範囲は、所属先の規程と関係法令を確認し、必要に応じて上司やスーパーバイザーに相談してください。

参考文献・出典

  • 国立精神・神経医療研究センター「こころの情報サイト 統合失調症」 https://kokoro.ncnp.go.jp/disease.php?@uid=tQtLd1xVUp1wHJMQ
  • 日本精神神経学会「はじめに:呼称変更の経緯」 https://www.jspn.or.jp/modules/advocacy/index.php?content_id=58
  • McGrath J, Saha S, Chant D, Welham J (2008) Schizophrenia: a concise overview of incidence, prevalence, and mortality. Epidemiologic Reviews, 30, 67-76. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18480098/
  • American Psychiatric Association (2022) Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fifth Edition, Text Revision (DSM-5-TR). American Psychiatric Association Publishing.
  • 日本精神神経学会(日本語版用語監修)、髙橋三郎・大野裕(監訳)『DSM-5-TR 精神疾患の診断・統計マニュアル』医学書院、2023年

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