疾患・状態

境界性パーソナリティ症(境界性パーソナリティ障害)

よみ:きょうかいせいぱーそなりていしょう別名・英語表記:境界性パーソナリティ障害、境界性人格障害、BPD、Borderline Personality Disorder

境界性パーソナリティ症(境界性パーソナリティ障害)とは、感情・対人関係・自己像の不安定さと衝動性が長く続き、自傷や自殺行動を伴うこともあるパーソナリティ症です。

境界性パーソナリティ症(境界性パーソナリティ障害、BPD)とは、感情、対人関係、自己像の不安定さと衝動性が青年期から成人期早期に始まり、長く続くことで、本人の生活に大きな支障が出るパーソナリティ症の一つです。見捨てられることへの強い不安、自傷や自殺行動を伴うことがあり、心理職が支援の中でも難しさを感じやすい領域です。

大切なのは、「扱いにくい人」というレッテルではなく、感情の調整の難しさとそれを支える環境の不足という視点で理解することです。心理職は、診断の判断を医師に任せつつ、安全の確保と、一貫した枠組みの中での関係づくりを担います。

境界性パーソナリティ症の主な特徴

診断基準(DSM-5-TR、ICD-11)の文言は著作物のため、ここでは要点だけを述べます。詳しくは原典を確認してください。

  • 感情の不安定さ: 気分が短時間で大きく動きます。怒りや空虚感、強い不安が続くことがあります
  • 対人関係の不安定さ: 相手を理想化してから失望して価値を下げる、見捨てられまいとして必死に努力する、といった極端な揺れが起こりやすくなります
  • 自己像の不安定さ: 自分が何者かという感覚が揺らぎ、目標や価値観が変わりやすくなります
  • 衝動性とリスク行動: 浪費、過食、危険な行動などが見られることがあります
  • 自傷行為・自殺関連行動: 繰り返しの自傷や、自殺をほのめかす言動、自殺企図が見られることがあります。自傷行為と希死念慮を参照してください
  • 一時的なストレス関連の症状: 強いストレス下で、疑い深さや現実感の薄れ(解離)が出ることがあります

ICD-11では、パーソナリティ症をまず重症度(軽度・中等度・重度)で評価し、必要に応じて特性の領域と「borderline pattern(境界性の特徴のパターン)」という特定用語を付ける方式になりました。一方、DSM-5-TRには従来どおり境界性パーソナリティ症というカテゴリーの診断があります。どちらを使うかは医療機関によって異なるため、診断名だけで判断せず、本人の困りごとに目を向けます。

生育歴で、虐待やネグレクトなどの逆境体験、愛着の問題が見られることが多いとされています。ただし、それだけで原因を決めつけることはできません。

似ている状態との違い

  • 双極症: 気分の波が、数日から数週間続く明確なエピソードとして現れるか、対人関係の刺激に反応して数時間で動くかで見分けます。双極症(双極性障害)を参照してください
  • うつ病: 抑うつ気分が続きます。BPDには抑うつを併存することが多いです。うつ病を参照してください
  • PTSD・複雑性PTSD: トラウマの影響と重なる症状が多く、鑑別と併存の両方を検討します。PTSD(心的外傷後ストレス症)を参照してください
  • 自閉スペクトラム症、ADHD: 対人関係の難しさや衝動性が似て見えます。発達の経過を確かめます。自閉スペクトラム症(ASD)とADHDを参照してください
  • ほかのパーソナリティ症、物質使用の問題: 併存することがあります

心理職が支援するときのポイント

最初に安全を確かめる

自傷や自殺関連行動の頻度が高いため、初回から、現在の希死念慮、自傷の有無と頻度、衝動性の高まる状況、使える対処、緊急時の連絡先を確かめます。高まったときの対応は、事前に本人と話し合っておくと混乱を減らせます。評価と対応の流れは、希死念慮と自傷行為にまとめています。

枠組みと一貫性

  • 面接の時間、頻度、キャンセルの扱い、面接外の連絡のルールを最初に明確にし、一貫して守ります
  • 約束できることとできないことを正直に伝えます。守れない約束をすることは信頼を損ねます
  • 感情の強さを否定せず、行動の選択には責任を持てるよう、感情の承認(バリデーション)と行動の見直しをセットにします
  • 理想化や価値下げの揺れが起きても、受け止める姿勢を一定に保ちます

支援者自身のケア

強い感情を向けられて、支援者が疲弊したり、自分の判断に自信が持てなくなったりします。ひとりで抱えず、チームでの方針の共有とスーパービジョンを受けることが大切です。分割(チームの中で意見が割れる)が起きていないかも、チームで確認します。

医療との連携

診断、薬物療法、入院の判断は医師が行います。主治医の方針を確かめ、危機のときの連絡先と役割分担を決めておきます。薬の種類や量について、心理職は助言しません。

よく使われる心理療法・アプローチ

BPDには、構造化された専門的な心理療法が国際的に用いられています。どれも専門的な訓練が必要で、実施の可否は所属先の体制によります。

  • 弁証法的行動療法(DBT): 感情調整、対人関係、苦痛への耐性、マインドフルネスのスキルを学びます。個人面接とスキル練習を組み合わせます。弁証法的行動療法(DBT)とマインドフルネスを参照してください
  • メンタライゼーションに基づく治療(MBT): 自分や他者の心の状態を考える力を高めます。メンタライゼーションとはを参照してください
  • スキーマ療法、転移焦点化精神療法など: 国内外で研究されています
  • 心理教育: 本人と家族に、症状の理解と関わり方を伝えます。心理教育を参照してください

「どの療法が一番よいか」は一概に言えません。本人の状態、通える頻度、地域の資源に合わせて、医療機関と相談しながら選びます。

関連する用語

  • 自傷行為
  • 希死念慮
  • 弁証法的行動療法(DBT)

参考文献・出典

  • 米国精神医学会(編)、日本精神神経学会(日本語版用語監修)、髙橋三郎・大野裕(監訳)『DSM-5-TR 精神疾患の診断・統計マニュアル』医学書院、2023年
  • 厚生労働省「みんなのメンタルヘルス総合サイト」 https://www.mhlw.go.jp/kokoro/
  • 日本精神神経学会「精神神経学用語集」「病名・用語の翻訳ガイドライン」 https://www.jspn.or.jp/
  • 国立精神・神経医療研究センター https://www.ncnp.go.jp/

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