疾患・状態

ADHD(注意欠如多動症)

よみ:えーでぃーえいちでぃー別名・英語表記:注意欠如・多動症、注意欠如・多動性障害、注意欠陥多動性障害、Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder

ADHD(注意欠如多動症)とは、不注意、多動性、衝動性が持続し、家庭や学校、職場など複数の場面で生活に支障が出る神経発達症です。

ADHD(注意欠如多動症、注意欠如・多動性障害)とは、不注意、多動性、衝動性のいずれかまたは複数が持続し、年齢や発達水準に合わない程度で、家庭・学校・職場など複数の場面で生活に支障が出る神経発達症です。症状は児童期から現れますが、成人になって初めて気づかれる人もいます。

心理職は、診断を下す立場ではなく、困りごとの具体的な場面を把握し、本人の工夫と環境調整を一緒に考える立場で関わります。診断や薬物療法は医師が行うため、主治医と役割を分けて連携することが基本です。

ADHDの主な特徴

診断基準(DSM-5-TR、ICD-11)では、不注意と多動性・衝動性の二つの領域で整理しています。基準の文言や項目数は原典を確認してください。要点は次のとおりです。

  • 不注意: 注意が続きにくい、ケアレスミスが多い、物をなくす、段取りを組んで最後までやり遂げることが苦手、といった形で現れます
  • 多動性: 落ち着いて座っていられない、そわそわする、しゃべりすぎる。成人では外見の多動が目立たず、内側の落ち着かなさとして感じられることもあります
  • 衝動性: 順番を待てない、考える前に行動する、人の話をさえぎる、といった形で現れます

診断では、症状が児童期から存在すること、複数の場面で見られること、生活や仕事に明らかな支障が出ていること、ほかの状態では説明できないことを確かめます。年齢が上がるにつれて、多動は目立たなくなり、不注意や整理整頓の困難が中心になる人が多いとされています。

厚生労働省の資料では、周囲のものに次々と関心が移り、周囲のペースより精力的に多くのことに取り組む、といった特性の例が示されています。一方で、関心の移りやすさが忘れ物や締め切りの遅れにつながると、本人の自己評価が下がりやすくなります。

似ている状態との違い

不注意や落ち着きのなさは、さまざまな状態で見られます。ADHDだけに目を向けず、鑑別と併存を丁寧に確かめます。

  • 自閉スペクトラム症: 社会的コミュニケーションの特性とこだわりが中心です。ADHDと併存することもあります。自閉スペクトラム症(ASD)を参照してください
  • うつ病、不安症: 集中の低下や落ち着きのなさが、気分や不安の問題から生じていることがあります。症状がいつから、どの場面で続いているかを確かめます。うつ病を参照してください
  • 睡眠の問題、身体疾患、薬の影響: 眠気や集中困難の原因になるため、医師による確認が必要です
  • トラウマ関連の状態、不適切な養育環境: 過覚醒が多動や不注意に見えることがあります。安全な環境が整っているかも含めて見立てます
  • 学習や環境の要因: 授業内容が合っていない、家庭環境が不安定、といった要因でも注意が続きません

心理職が支援するときのポイント

アセスメントで確かめること

  • 困りごとの具体的な場面と頻度(遅刻、忘れ物、先延ばし、対人関係など)
  • 児童期からの経過、学校での様子、通知表や母子手帳など参考になる資料の有無
  • 睡眠、生活リズム、飲酒・カフェインなどの習慣
  • 二次的な不調(抑うつ、不安、自己肯定感の低下、不登校・休職)
  • 強み、関心、うまくいっている工夫

評価尺度や知能検査は補助的な情報になります。WAIS(ウェクスラー成人知能検査)やWISC(ウェクスラー児童用知能検査)は、認知の特徴の把握に使われることがあります。診断は検査だけでは決まらず、医師が総合的に判断します。

面接での配慮

  • 面接の最初に今日の流れを示し、終わりに要点を短くまとめてメモにして渡すなど、情報を絞って伝えます
  • 長い説明を避け、一度に伝える項目を少なくします
  • 話題が移りやすいときは、責めずに本題に戻す合図を事前に決めておきます
  • 遅刻や忘れ物があっても、評価的な言い方を避け、仕組みで防ぐ話にします
  • 責められた経験を重ねている人が多いため、できていることを具体的に言葉にして返します

環境調整と連携

困りごとを意志や性格の問題とせず、仕組みで補う方向で考えます。たとえば、予定をスマートフォンやカレンダーで見える化する、作業を小さく区切る、片づける場所を決めるなどです。職場や学校には、本人の同意を得たうえで配慮してほしい点を具体的に伝えます。守秘義務については公認心理師の守秘義務とはを参考にしてください。

地域の相談先は、国立障害者リハビリテーションセンターの発達障害情報・支援センターのサイトから探せます。発達障害者支援法に基づく発達障害者支援センターも相談先になります。

薬物療法との関係

薬物療法は医師が判断します。心理職は薬の種類や量について助言せず、本人が服薬について感じていることや副作用の訴えを丁寧に聞いて、主治医に共有できるよう支えます。

よく使われる心理療法・アプローチ

  • 心理教育: 本人と家族に特性の理解と対処法を伝えます。心理教育を参照してください
  • 認知行動療法: 時間管理や先延ばし、整理整頓、否定的な思い込みなどに対して、具体的な方法を練習します。認知行動療法(CBT)を参照してください
  • ペアレントトレーニング: 児童の場合、保護者が子どもへの関わり方を学ぶ方法です。保健・医療・教育の現場で行われています
  • 環境調整: 学校や職場での配慮、生活の仕組みづくりを支援します

効果の程度は人によって異なります。状態に合わせて、医療、教育、福祉と役割を分担します。

関連する用語

  • 自閉スペクトラム症(ASD)
  • 認知行動療法(CBT)
  • 心理教育

参考文献・出典

  • 米国精神医学会(編)、日本精神神経学会(日本語版用語監修)、髙橋三郎・大野裕(監訳)『DSM-5-TR 精神疾患の診断・統計マニュアル』医学書院、2023年
  • 厚生労働省「発達障害の特性(代表例)」(事業主向けeラーニング) https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/shougaishakoyou/shisaku/jigyounushi/e-learning/hattatsu/characteristic.html
  • 国立障害者リハビリテーションセンター 発達障害情報・支援センター https://www.rehab.go.jp/ddis/
  • 日本精神神経学会「精神神経学用語集」「病名・用語の翻訳ガイドライン」 https://www.jspn.or.jp/

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