心理検査・アセスメント
WAIS(ウェクスラー成人知能検査)
よみ:うぇいす別名・英語表記:ウェクスラー成人知能検査、Wechsler Adult Intelligence Scale、WAIS-IV、WAIS-III
WAISとは、16歳以上の青年・成人を対象にした、ウェクスラー式の個別式知能検査です。全般的な知的能力と、認知面の得意・不得意のプロフィールを把握するために使われます。
WAIS(ウェイス、ウェクスラー成人知能検査)とは、成人の知的能力を個別に測定するための知能検査で、D. ウェクスラーが開発した一連の検査のうち、青年期後半から成人を対象とするものです。全般的な知的水準を示す合成得点と、言語理解や処理速度など複数の側面の得点から、認知面のプロフィールをとらえることができます。
日本の臨床では、令和8年度の診療報酬の留意事項通知に「WAIS-III成人知能検査」「WAIS-IV成人知能検査」の名称が載っており、病院や発達支援、就労支援などで広く使われています。日本版の最新はWAIS-IV(2018年刊行)です。検査の中身(問題や採点基準)は検査の信頼性にかかわるため、ここでは書きません。名前と、何を測るか、使う場面に絞って整理します。
WAISでわかること
WAISでわかるのは、全般的な知的能力の水準と、その内訳にあたる認知機能のバランスです。たとえば、言葉で考える力と、図形や視覚的な情報で考える力、ワーキングメモリー、作業の速さに差があるかどうかを見ます。
ここで押さえたいのは、知能指数だけが目的ではないという点です。個人内の得意・不得意の偏りが、日常生活や仕事での困りごとと結びつくかどうかを検討する材料として使われます。たとえば、発達特性が疑われる人の理解を深める場面でも、検査結果だけで診断が決まるわけではなく、生育歴や行動観察、他の検査と合わせて医師が総合的に判断します。
対象と構成
- 対象: 日本版WAIS-IVは16歳0か月から90歳11か月まで(発行元の案内による)。16歳の人は児童用のWISCと対象年齢が重なるため、どちらを使うかは目的や所属先の運用で決めます
- 形式: 検査者と1対1で行う個別式です。所要時間は個人差が大きく、診療報酬の通知でも、この検査が入る区分は検査と結果の処理に1時間30分以上かかるものと位置づけられています
- 結果の出し方: 全般的な能力を示す合成得点と、複数の指標得点が得られます
海外では次の版(WAIS-5)が出ていますが、日本版の刊行は2026年11月3日時点で確認できていません。令和8年度の通知に載っているのもWAIS-IIIとWAIS-IVまでです。日本で使うときは、通知の名称と手元のマニュアルの版を確かめてください。
診療報酬の通知での位置づけ
医療機関で実施する場合、WAISは「D283 発達及び知能検査」に入ります。令和8年度の留意事項通知では、WAIS-III・WAIS-IVの全検査は「操作と処理が極めて複雑なもの」、WAIS-III・WAIS-IVの簡略版は「操作が容易なもの」に分けて載っています。全検査か簡略版かで区分が変わるため、依頼の段階で医師とどちらを行うかを確かめておきます。
同じ通知では、臨床心理・神経心理検査は、医師が自ら、または医師の指示で他の従事者が自施設で検査と結果処理を行い、その結果を医師が分析した場合に算定するとされています。心理職が実施する場合も、医師の指示と、医師が分析できる形の報告がそろっている必要があります。詳しくは厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」の通知で確認してください。
実施と解釈の注意点
- 検査者の要件: 実施・採点には専門的な訓練が必要です。マニュアルに沿って、標準化された手順で行います。練習なしに本番で実施しないでください
- 目的を確かめる: 何のために検査するのか(診断の補助、支援方針、就労や教育の配慮など)を、依頼元と相談者の両方に確認します。目的が曖昧だと所見が使いにくくなります
- 相談者への説明と同意: 検査の目的、結果の使い道、誰に共有されるかを事前に説明します。「点数で価値が決まる」という受け取り方への配慮が必要です
- 体調・気分・動機づけの影響: 疲労、抑うつ、不安、服薬の影響で、本来の力が出にくいことがあります。実施時の様子を行動観察として記録します。高齢の人では、視力や聴力、疲れやすさにも気を配ります
- 得点のばらつきの読み方: 指標間に大きな差があるときは、合成得点だけで全体像を語らず、個別の指標の意味を丁寧に検討します
- 再検査の間隔: 同じ検査を短い期間に繰り返すと、練習効果が出ることがあります。前回の実施日と版を確かめ、再検査の間隔は慎重に検討します
- 検査用紙・用具の取り扱い: 検査の内容を外部に漏らさない、相談者に検査項目の解答を伝えないなど、検査の公正さを守ります。所属先の規程に従ってください
面接・連携で押さえること
成人の場合、検査の依頼は、診断の補助、就労や復職の支援、障害福祉サービスや手帳の手続きなど、生活への影響が大きい場面で出ることがあります。依頼元と相談者がそれぞれ何を期待しているかを事前に聞き、検査で答えられることと答えられないことを伝えておくと、結果の受け止めのずれを減らせます。
結果のフィードバックでは、数値を伝えるだけでなく、強みと工夫できる点を相談者の生活場面に結びつけて話します。結果を職場や家族に伝えるかどうかは本人の意向を確かめ、共有の範囲は同意と所属先の規程に従います。認知機能の低下が気になる高齢の人では、短時間でできるスクリーニング(HDS-Rなど)との使い分けを医師と相談します。
所見の書き方のポイント
結果は、数値の羅列ではなく、読み手が使える形にまとめます。
- 検査の目的、実施日、実施時の様子を最初に書く
- 数値は、全体の水準と指標ごとの特徴にしぼって伝える
- 数値から日常生活や仕事での困りごと・強みへつなげて書く
- 診断名を断定しない。診断は医師の領域であることを意識する
- 読み手(医師、学校、職場など)に合わせて専門用語を減らす
詳しくは心理検査の所見の書き方を、検査全体の種類は心理検査の種類と特徴を参照してください。
関連する用語
- WISC(ウェクスラー児童用知能検査)、HDS-R(改訂長谷川式簡易知能評価スケール)は本文のリンクを参照
参考文献・出典
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html
- 厚生労働省「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」(令和8年3月5日保医発0305第6号)別添1 医科点数表(D283 発達及び知能検査) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001757385.pdf
- 厚生労働科学研究成果データベース 研究課題ページ(日本版WAIS-IV 研究版を用いた調査の記載) https://mhlw-grants.niph.go.jp/project/22756
