疾患・状態

強迫症(強迫性障害)

よみ:きょうはくしょう別名・英語表記:強迫性障害、OCD、Obsessive-Compulsive Disorder

強迫症(強迫性障害)とは、不合理だとわかっていても頭から離れない考え(強迫観念)と、それを打ち消すための繰り返しの行為(強迫行為)で生活に支障が出る状態です。心理職は曝露反応妨害法を軸に支援します。

強迫症(強迫性障害、OCD)とは、頭から離れない考えや衝動(強迫観念)と、それがもたらす不安を打ち消すために繰り返してしまう行為(強迫行為)によって、日常生活や対人関係に支障が出る状態です。本人も「やりすぎだ」「意味がない」とわかっているのにやめられない、という体験が中心にあります。

病名は、日本精神神経学会の DSM-5 の翻訳ガイドライン(2014年)で「強迫症/強迫性障害」と併記され、その後は「症」を使う「強迫症」の表記が広がっています。現場ではまだ「強迫性障害」も広く使われているため、記録や資料では両方に出会います。

強迫症の主な特徴

強迫症の中心は、強迫観念と強迫行為の2つです。国立精神・神経医療研究センターの「こころの情報サイト」では、代表的な内容として次のようなものが挙げられています。

  • 不潔への恐怖と、それに伴う過剰な手洗いや洗濯などの洗浄
  • 他人を傷つけてしまったのではという不安と、それをたしかめる行為
  • 戸締まりやガス栓などを何度も確かめる確認行為
  • 自分で決めた手順を守らないと悪いことが起きるという不安から行う儀式的な行為
  • 数字や物の配置、左右対称などへのこだわり

ここで押さえたいのは、強迫行為は目に見える行動だけではない点です。頭の中で数を数える、祈る、打ち消す言葉を唱える、といった外から見えにくい行為(心の中の強迫行為)もあります。さらに、触れない、行かないといった回避も、不安を一時的に減らすという点で同じ働きをします。

診断基準の要点としては、強迫観念か強迫行為(またはその両方)があり、時間を大きく取られる、または苦痛や生活上の支障が生じていることが求められます。基準の細かな文言は、DSM-5-TR や ICD-11 の原典で確認してください。

似ている状態との違い

強迫症は、いくつかの状態と間違えやすい、あるいは併存しやすいことが知られています。心理職は、診断をつける立場ではありませんが、見立てを整理するために違いを知っておくと役に立ちます。

  • 心配が多い状態との違い: 全般不安症(全般性不安障害)の心配は現実の出来事についての反芻が中心です。強迫症では、不安を打ち消すための決まった行為や儀式がセットになっています
  • うつ病との関係: 強迫症には抑うつを伴うことが多いと、こころの情報サイトでも述べられています。うつ病が併存しているかどうかで、面接の進め方や連携の優先順位が変わります
  • 自閉スペクトラム症や反復的な行動: こだわりや反復行動は自閉スペクトラム症にも見られます。強迫症では不安や不快感を減らす目的が強く、本人が「やめたい」と感じていることが多い点が手がかりになります
  • 性格としての几帳面さ: 本人や周囲が困っていない、時間を取られていない場合は、病的とは言えません。生活への支障と周囲の巻き込みの有無が判断の目安になります

心理職が支援するときのポイント

アセスメントでは、症状の内容より先に、症状が生活をどれだけ占めているかを聞くのが基本です。たとえば次のような点を確かめます。

  • 強迫行為に1日どれくらい時間を使っているか、遅刻や仕事・学業への影響があるか
  • 見えにくい行為(頭の中の儀式、安心を求める質問の繰り返し)や回避がないか
  • 家族や同僚が確認の手伝いや代わりの行為に巻き込まれていないか
  • 抑うつ、希死念慮、他の不安の症状がないか。必要に応じて希死念慮の確認を行う
  • 過去の治療歴と、通院・服薬の有無、主治医の方針

面接では、症状の内容を詳しく語らせすぎないことに気をつけます。恥ずかしさから語れない人も多く、反対に、内容を話すたびに安心を求める行為になってしまうこともあります。「この内容は大変なことになるでしょうか」といった保証を求められたとき、保証を与え続けると、かえって症状が維持される場合があります。対応の方針は、ケースフォーミュレーションとして整理してからチームで揃えると安定します。関連する考え方はケースフォーミュレーションの記事でも整理しています。

よく使われる心理療法・アプローチ

こころの情報サイトでは、治療の柱として認知行動療法と薬物療法の組み合わせがよく行われるとされ、認知行動療法の代表的な方法として曝露反応妨害法が紹介されています。曝露反応妨害法(ERP)は、不安を引き起こす状況にあえて向き合い(曝露)、不安を下げるための強迫行為をしない(反応妨害)ことで、行為をしなくても不安は自然に下がっていくことを体験として学ぶ方法です。

進めるときの実務上の注意は次のとおりです。

  • 本人が「やってみよう」と思えるよう、心理教育で強迫観念から行為、不安の一時的な減少、再び強まる、という悪循環を共有する
  • 不安階層表は本人と一緒に作り、低い負荷から段階的に進める
  • 家族がいる場合は、巻き込みを減らす関わり方を一緒に確認する
  • 薬の種類や量、変更は医師の領域であり、心理職は服薬について助言しない。主治医の治療方針を確かめ、医療機関と連携して進める

認知行動療法の全体像は認知行動療法の項目も参考になります。

参考文献・出典

  • 国立精神・神経医療研究センター「こころの情報サイト 強迫性障害」 https://kokoro.ncnp.go.jp/disease.php?@uid=MiyHEH6ZUZDxDeYX
  • 日本精神神経学会 精神科病名検討連絡会「DSM-5 病名・用語翻訳ガイドライン(初版)」精神神経学雑誌 116巻6号、2014年 https://www.jspn.or.jp/uploads/uploads/files/activity/dsm-5_guideline.pdf
  • American Psychiatric Association (2022) Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fifth Edition, Text Revision (DSM-5-TR). American Psychiatric Association Publishing.
  • 日本精神神経学会(日本語版用語監修)、髙橋三郎・大野裕(監訳)『DSM-5-TR 精神疾患の診断・統計マニュアル』医学書院、2023年

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