ケースフォーミュレーションとは?書き方・5P・CBTでの使い方

ケースフォーミュレーションとは?書き方・5P・CBTでの使い方

ケースフォーミュレーションとは何かを、見立て・アセスメントとの違い、書き方の型、5Pモデル、認知行動療法での使い方まで、心理職向けに公的・一次情報をもとに整理します。

ケースフォーミュレーション(事例定式化)とは、クライエントの問題がなぜ生じ、なぜ続いているのかを、心理学の理論と収集した情報にもとづいて組み立てる作業仮説のことです。診断名に当てはめて終わりにせず、「この人の、この問題が、いま続いている仕組み」を言葉や図にして、介入の方針につなげます。

この記事では、現場でケースを担当している心理職に向けて、見立て・アセスメントとの関係、項目と書き方の型、5Pモデル、認知行動療法での使い方を整理します。架空の事例は作らず、書式の型と考え方で示します。

この記事でわかること

  • ケースフォーミュレーションの定義と、診断・見立て・アセスメントとの関係
  • 書くときの項目と、1枚にまとめる型(問題リスト、メカニズム、起源、誘発要因、作業仮説)
  • 5Pモデルの5つの要素と使いどころ
  • 認知行動療法での手順、機能分析とのつながり、協働・更新の進め方、ほかの学派の定式化
  • つまずきやすい点と、学ぶための文献

ケースフォーミュレーションとは

ケースフォーミュレーションは、事例定式化とも訳され、「この人にいま何が起きていて、なぜそれが続くのか」を、理論を手がかりに言葉へ落とす作業です。本人の経験や人間関係、置かれた環境もふまえ、クライエントと一緒に練り上げる点が特徴です。国立国会図書館の書誌情報でも、協働で作る「ベストな推論」という趣旨の紹介があります。

ここでのポイントは、完成した答えではなく仮説だという点です。介入しながら新しい情報が入れば、書き換えていきます。

診断名だけでは足りない理由

Macneil らは2012年の論文(BMC Medicine)で、診断だけでは原因や介入の選び方についてわかることが限られるとしています。同じ診断名でも、共通する症状がほとんどない2人が出てきうることも指摘しています。そのうえで、ケースフォーミュレーションは「なぜこの人か」「なぜこの問題か」「なぜ今か」に答える枠組みになり得るとしています(Macneil et al., 2012)。

診断が不要という意味ではありません。診断は共通言語として役に立ちます。診断に加えて、個別の事情を足す作業がフォーミュレーションだと考えると整理しやすくなります。

ケースフォーミュレーションが果たす役割

同論文は、フォーミュレーションの機能として次の点を挙げています。

  • 本人の表れ方に影響した要因を理解する
  • 主要な困りごとを特定する
  • どの介入を、どの順で使うかを決める
  • 治療の途中で起こりうる困難を予測する

とくに、通常の介入で十分な反応が得られないケースや、併存があってどこから手をつけるか迷うケースで役立つとされています。

ケースフォーミュレーションと見立て・アセスメントの違い

3つの言葉は重なる部分が多く、現場では混ざって使われがちです。ここでは、一つの整理の仕方として示します。使い方は所属先や学派で違うため、チーム内で意味をそろえておくと安心です。

見立てとの違い

「見立て」は、臨床現場で使われてきた日本語で、クライエントの状態や問題の成り立ち、今後の見通しについての臨床的な判断を指すことが多い言葉です。ケースフォーミュレーションは、その見立てを理論にもとづいて構造化し、言葉や図で共有できる形にしたものと捉えると使いやすくなります。

見立ては、面接者の頭の中にとどまる場合があります。ケースフォーミュレーションは、記録やシートに書き出し、クライエントやチームと確かめられる形にする点が違いです。

アセスメントとの違い

アセスメントは、面接、観察、心理検査などで情報を集め、状態を把握する過程です。公認心理師法第2条第1号の「心理状態を観察し、その結果を分析すること」は、アセスメントにあたる行為と読めます(公認心理師法の本文(厚生労働省))。

ケースフォーミュレーションは、集めた情報を材料に「なぜ問題が続くのか」を説明し、介入計画に橋渡しする段階です。Macneil らも、フォーミュレーションを「アセスメントと治療の橋渡し」という定義で紹介しています。ただし、現実の面接では、情報を集めながら仮説を立て、仮説に沿って次の質問を考えるので、段階がきれいに分かれるわけではありません。

初回の聞き取りの進め方は、インテーク面接の目的と流れの記事で扱っています。ここでは、集めた情報をどう組み立てるかに絞ります。

ケースフォーミュレーションの項目と書き方の型

書式は学派や所属先で違いますが、多くの型に共通する項目があります。ここでは認知行動療法のPersons らの型を土台に、項目ごとに書き方を示します。

問題リストを作る

まず、クライエントが抱えている問題を一覧にします。Persons と Tompkins は、症状だけでなく、対人関係、仕事や学校、身体、経済、住まい、法的問題、余暇、治療そのものへの困りごとなど、複数の領域から拾うことを勧めています。

書き方のコツは次のとおりです。

  • 1項目は短い名前と説明で書く(例:「回避」+その中身)
  • 可能なら、認知・行動・身体反応・感情の要素を添える
  • 項目が10を超えるなら、似たものをまとめる
  • 治療の中で優先して扱う必要がある問題(自殺行動や治療への意欲の低さなど)は、症状の一部であっても独立した項目にしてよい

メカニズム(維持要因)を仮説にする

次に、問題を引き起こし、続けていると考えられる心理的・生物学的な仕組み(メカニズム)を書きます。たとえば、特定の信念、回避行動、反すう、対人スキルの不足などです。ここが介入の標的になるので、フォーミュレーションの中心部分です。

書くときは、問題リストの各項目と矢印などでつなぎ、「どの仕組みが、どの問題を維持していると考えるか」が読み取れるようにします。

起源と誘発要因を分ける

起源は、そのメカニズムが形成された遠い要因です。生育歴、家族、文化、学習の歴史などが入ります。誘発要因は、いま問題が始まった、または悪化した直接のきっかけです。同じ出来事でも、起源と誘発要因を混ぜると、時間の流れが見えなくなります。

  • 起源:メカニズムはいつ、どこで学ばれたと考えられるか
  • 誘発要因:今回の発症や悪化の前に何が起きたか

作業仮説を数行の文章にまとめる

最後に、ここまでの要素を数行の文章か1枚の図にまとめます。Persons らは、フォーミュレーションの役割の一つを、多くの情報を「バラバラの事実の羅列」ではなく、全体として理解できる筋書きにすることだとしています。

型の例を示します。架空の事例ではなく、空欄を埋める書式です。

  • 「(誘発要因)をきっかけに、(起源)で身につけた(メカニズム)が活性化し、(問題リストの項目)が生じ、(維持の悪循環)によって続いていると考える」
  • 「強みとして(保護要因)がある」
  • 「そのため、まず(標的)に(介入)を行い、(指標)で効果を確かめる」

強み・保護要因を入れる

問題と弱点だけの記述になりやすいので、強みや支えも必ず入れます。Macneil らは Kuyken らを引いて、保護要因を入れることが症状の軽減やレジリエンスの向上につながるとしています。そのうえで、本人と臨床家の見通しが明るくなり、関係づくりにも役立つと述べています。

5Pモデルとは

5Pは、フォーミュレーションの内容を5つの視点で整理する枠組みです。Macneil らは、比較的よく使われる方法として紹介しています。起源には複数の説明があり、本記事では枠組みの中身だけを示します。

  • Presenting problem(主訴・現在の問題):診断名にとどまらず、本人と臨床家が困りごとと捉えていること、生活への影響、介入で扱う優先順位を含みます
  • Predisposing factors(素因):生物学的な要因、遺伝的な脆弱性、環境(社会経済的状況、トラウマ、愛着歴)、心理・性格の要因など、発症のリスクを高める要因です
  • Precipitating factors(誘発要因):発症の前にあった出来事で、対人関係、法的、仕事、身体、経済面のストレスなどが入ります
  • Perpetuating factors(維持要因):いまの困難を続けている要因で、回避や安全行動、引きこもり、睡眠の乱れ、注意や記憶の偏りなどです
  • Protective / positive factors(保護・強み):ソーシャルサポート、スキル、興味、本人の特性など、影響を和らげる要因です

5Pの利点は、学派を問わず使いやすく、短時間で整理できることです。一方で、5つの欄を埋めるだけだと、要素どうしのつながりが書かれません。欄を埋めたあとで、「素因と誘発要因がどう重なって維持要因が働いているか」を文章か矢印で足すと、仮説として使えるものになります。

なお、Persons らの型と5Pは、名前は違っても内容が対応しています。素因と起源、誘発要因、維持要因とメカニズム、が主な対応です。どちらを使うかは、所属先の書式や学派に合わせて選べば十分です。

ケースフォーミュレーションの例(型で見る)

「例」を探す方が多いのですが、実在しない事例を作ると、かえって読者の判断を誤らせるおそれがあります。ここでは、1枚のシートに載せる項目の並びだけを示します。

  • 基本情報(年齢帯、所属、紹介経路など、守秘に配慮した最小限)
  • 問題リスト(領域ごと、優先順位つき)
  • 診断または診断の候補(ある場合)
  • 作業仮説の図(メカニズムと問題を矢印でつなぐ)
  • 起源に関する仮説と根拠
  • 誘発要因
  • 強み・保護要因
  • 治療目標と介入計画
  • 進み具合の測定方法(尺度、頻度)
  • 想定される治療上の障害(通院の中断、宿題の負担など)
  • 更新日と更新理由

記録の全体の型やSOAPとの関係は、カウンセリング記録の書き方の記事を参照してください。事例を発表したり共有したりするときは、個人が特定されないように加工し、所属先の規程に従います。

認知行動療法でのケースフォーミュレーションの使い方

認知行動療法(CBT)では、フォーミュレーションは、アセスメントと介入をつなぐ中心的な作業です。Persons らは、「アセスメント・フォーミュレーション・介入」の三つを回しながら、仮説を検証する進め方を示しています。

手順の全体像

Persons と Tompkins は、次の手順をこの順に進めることを勧めています。実際の面接では、アセスメントと介入が重なりながら進みます。

  • 包括的な問題リストを作る
  • 診断をつける
  • 中心になる診断(アンカー診断)を選ぶ
  • その診断に対応する一般的なモデル(たとえば抑うつに対するBeckの認知モデル)を選ぶ
  • 事例の細部に合わせて個別化し、問題リストのすべてとその関係を説明できるようにする
  • 生活歴・家族歴を集め、メカニズムの起源についての仮説を立てる
  • 現在の困難の始まりを聞き、誘発要因を記述する

この方法の特徴は、診断ごとの一般的なモデルを出発点にして、そのクライエントに合わせて個別化するところです。ゼロから作らないので、経験が浅い段階でも使いやすい方法です。

機能分析とのつながり

機能分析は、問題となる行動について、その前にあった状況(先行事象)と、その後に起きたこと(結果)を調べ、行動が続く理由を探る方法です。ABC分析とも呼ばれます。ケースフォーミュレーションでは、ここで得た情報が「回避が不安を一時的に下げるため続く」といったメカニズムの仮説の材料になります。ケースフォーミュレーションが全体の見取り図、機能分析が個々の行動を細かく見る道具、と整理すると使い分けやすくなります。Persons と Tompkins は、Hurl ら(2016)のメタ分析を挙げています。13研究・57の単一事例を調べたもので、事前に機能分析をして組んだ治療のほうが効果が高い結果でした。ただし対象は主に子どもや若者の破壊的行動で、成人の臨床にそのまま当てはまるとは限りません。面接全体の進め方は、認知行動療法のやり方の記事も参照してください。

クライエントと協働で作る

CBTでは、フォーミュレーションを面接者が一人で作って渡すのではなく、クライエントと一緒に、図を描いたり思考記録を使ったりしながら少しずつ作ります。協働で作ることが、治療関係を強くするとも述べられています。

説明するときは、診断名よりも「いまの状態が続いている仕組み」を、本人の言葉で確かめながら進めます。本人が「それは違う」と言う箇所は、仮説を直す手がかりになります。

進み具合を測って、仮説を確かめる

フォーミュレーションは仮説なので、介入の結果でその妥当性を確かめます。Persons らは、毎回の面接で症状などの指標を測る進捗モニタリングを、フォーミュレーションを使った方法の中で実証的な裏づけが最も強い要素と位置づけています。指標が動かないときは、介入だけでなく、仮説そのものを見直す合図です。

なお、フォーミュレーションを使うことと、使わない場合との効果の比較については、研究がまだ限られているとMacneil らも述べています。効果を断定せず、「個別の事情に合わせるための道具」と位置づけるのが妥当です。

精神力動・システム論の定式化

CBT以外にも、学派ごとに定式化の見方があります。たとえば精神力動的な立場では、過去の関係の経験や葛藤が現在の対人パターンに表れると捉えます。システム論(家族療法)の立場では、個人だけでなく家族など関係の循環に注目します。同じ事例でも学派によって見立ての中心が変わるため、共通の事例で比べた書籍(文献の節を参照)も出ています。詳しい手順は各学派の専門書で確認してください。

文化的な要因にも目を向ける

Persons らは、文化的な要因が、治療への期待や中断のしやすさに関わると述べています。たとえば、臨床家に指示してほしいと期待するクライエントに、質問中心の進め方だけで対応すると、行き違いが起こることがあります。個別化の項目に、文化や価値観を入れておくと見落としを減らせます。

ケースフォーミュレーションでつまずきやすい点

書けているようで機能していない、というパターンがあります。次の点を確認してください。

  • 情報の羅列になっている(要素どうしの関係が書かれていない)
  • 診断名の説明で終わっていて、そのクライエントに固有の部分がない
  • 維持要因がなく、介入計画につながらない
  • 強みが書かれていない
  • 初回に作ったまま更新されていない
  • クライエントに共有されていない、または一方的に伝えている

Macneil らは、フォーミュレーションの話し合いで、本人が悲しみや不安を感じた報告もあるとして、関係の中でゆっくり、協働して進める大切さを述べています。伝え方は、タイミングと言葉選びが大切です。

フォーミュレーションの質は、研修や経験で変わることが報告されています(同論文)。事例検討会やスーパービジョンの受け方で、自分の仮説を言葉にして他者の目を通すことが、上達の近道です。倫理や守秘の取り扱いで迷うときは、所属先の規程や関係法令を確認し、上司やスーパーバイザーに相談してください。

ケースフォーミュレーションを学ぶ文献

学びはじめの本の選び方はカウンセリング本のおすすめも参考になります。ここでは日本語で読める書籍を、書誌を確認できた範囲で挙げます。内容の要約は書かず、扱っているテーマだけを示します。

  • ジャクリーン・B・パーソンズ著、坂野雄二・本谷亮監訳『認知行動療法ケース・フォーミュレーション』金剛出版、2021年。認知行動療法でのケース・フォーミュレーションを扱う
  • ルーシー・ジョンストン、ルディ・ダロス編、坂戸美和子・大野裕監訳『ケースフォーミュレーション:6つの心理学派による事例の見立てと介入』金剛出版、2024年。6つの学派が共通の事例に行う定式化を比べる構成
  • 下山晴彦『みんなの認知行動療法:ケース・フォーミュレーションを使いこなす』遠見書房、2025年。認知行動療法でのケース・フォーミュレーションの使い方を扱う
  • 坂野雄二・中村伸一・遊佐安一郎『ケースフォーミュレーションを語る:3人のエキスパートから学ぶ心理療法の奥義』金剛出版、2025年。認知行動療法、家族療法、感情調節の困難を取り上げる

よくある質問

Q. ケースフォーミュレーションとは何ですか?

クライエントの問題がなぜ生じ、なぜ続いているのかを、心理学の理論にもとづいて組み立てた作業仮説です。診断名だけでなく、個別の事情と強みを含め、介入の方針を決めるために使います。

Q. ケースフォーミュレーションとアセスメントは何が違いますか?

アセスメントは情報を集めて状態を把握する過程で、フォーミュレーションは、その情報をもとに問題が続く仕組みを説明し、介入につなげる段階です。実際の面接では、行き来しながら進みます。

Q. ケースフォーミュレーションは認知行動療法だけのものですか?

いいえ。認知行動療法で盛んに使われますが、精神力動、システム論などの立場にもそれぞれの定式化があります。6つの学派の定式化を比べる書籍も出ています。

Q. 5Pとは何ですか?

主訴・現在の問題、素因、誘発要因、維持要因、保護・強みの5つの頭文字をとった整理の枠組みです。要素を埋めたあとで、つながりを文章や矢印で足すと仮説として使えます。

Q. ケースフォーミュレーションはいつ書き換えますか?

新しい情報が出たとき、進捗の指標が動かないとき、クライエントから違和感が出たときです。Persons は(Macneil らの引用で)、仮説を立て、検証し、見直し、修正する連続した過程と述べています。

Q. 初心者でも書けますか?

診断ごとの一般的なモデルを出発点にして、そのクライエントに合わせて個別化する方法なら、取りかかりやすくなります。スーパービジョンや事例検討で確認してもらいながら進めてください。

まとめ

  • ケースフォーミュレーションは、問題が続く仕組みを理論にもとづいて説明する作業仮説で、見立てを言葉や図にして共有できる形にしたもの
  • 書き方の型は、問題リスト、メカニズム、起源、誘発要因、強み、作業仮説、介入計画。5Pモデルも使いやすい。要素をつなぐことが大切
  • 認知行動療法では、協働で作り、進捗を測って仮説を確かめ、必要に応じて書き換える

ケースフォーミュレーションは、書くこと自体が目的ではなく、次の一手を決めるための道具です。まずは1ケースで問題リストと維持要因の仮説から書き出してみてください。