カウンセリング記録の書き方|面談記録の型とひな形・SOAP

カウンセリング記録の書き方を、事実・見立て・計画の分け方、面談記録のひな形、SOAPと逐語録の違い、保存期間と開示請求への備えまで、公認心理師・臨床心理士向けに整理します。
カウンセリングの記録は、「事実(相談者の発言・観察)」「見立て(面接者の解釈)」「計画(次にすること)」の3つを分けて、短く、あとから読んで誰でも状況がわかる形で残すのが基本です。分けて書くだけで、引き継ぎ、スーパービジョン、開示請求への備えまで一度に楽になります。
この記事は、現場で面接記録を日々つけている公認心理師・臨床心理士に向けて、面談記録の書き方の型、SOAP と逐語録との違い、ひな形に使える項目例、保存期間と開示請求への備え方を実務の視点でまとめたものです。所属先に様式がある場合は、そちらが優先されます。
この記事でわかること
- カウンセリング記録を書く目的と、書き方の基本ルール
- 面談記録・SOAP・逐語録の違いと使い分け
- ひな形にできる項目例(初回・毎回・終結時)
- 記録の保存期間と開示請求について、法令・倫理綱領から確認できること
- 書き方でありがちな失敗と直し方
カウンセリング記録を書く目的
記録は何のために書くのかをはっきりさせておくと、書く量と書き方の判断がしやすくなります。主な目的は4つに整理できます。
面接の連続性を保つため
自分自身が次回の面接で前回の流れを思い出すための記録が、最初の役割です。ケース数が増えるほど、記憶だけでは経過を追えなくなります。主訴、合意した目標、前回の宿題、気になった変化を残しておくと、次回の冒頭で迷いません。
引き継ぎ・チーム連携・スーパービジョンのため
担当の交代、多職種との連携、事例検討やスーパービジョンでは、第三者が読んで状況を再現できる記録が必要です。ここで「事実」と「見立て」が混ざっていると、読み手が何が起きたのかを判断できません。
倫理上・法令上の説明責任のため
日本臨床心理士会の倫理綱領は、第4条で、面接等の業務内容を客観的かつ正確に記録しておくことを求めています。日本公認心理師協会の倫理綱領も、第7条で、業務の透明性と説明責任のために適切な記録の作成・保管に努めることを定めています。また、情報開示を求められたときの対応も、記録を前提に考える必要があります。この点は後の章で整理します。
自分の判断を振り返るため
見立てと実際の経過を並べて読み返すと、自分の判断がどこで当たり、どこで外れたかがわかります。見立てを事実と分けて残しておく意味は、ここにもあります。
カウンセリング記録の書き方の基本
どの様式を使うにしても共通する、書き方の基本ルールです。
事実・発言・見立てを分けて書く
記録でいちばん大事なのは、見聞きしたこと(相談者の発言、観察された様子)と、面接者の解釈・判断を、読んで区別できるように書くことです。
- 「眠れていない」と相談者が語った(発言)
- 目の下にくまがあり、面接中に何度もあくびをしていた(観察)
- 抑うつ状態が背景にある可能性を考えた(見立て)
観察と見立てを混ぜずに書いておくと、のちに見立てが変わったときも、元の事実を参照できます。
根拠になる発言は「」で残す
見立てや方針の根拠になった発言、本人の希望や表現は、要約せずに「」で残します。それ以外の部分は、要約であることがわかるように書きます。「どう言ったか」が重要な場面(自傷や希死念慮に関わる発言、決意や拒否の表明など)では、言葉をそのまま残すほうが後で役に立ちます。
評価語を避け、具体的に書く
「意欲が低い」「態度が悪い」のような評価語や、「特に変わりなし」のような曖昧な表現は避け、行動や発言で書きます。たとえば「意欲が低い」と書く代わりに、「次回までの課題に取り組めなかった理由を問うと、『考える気力が出ない』と話した」と書くと、誰が読んでも同じ状況を思い描けます。
面接後できるだけ早く書く
日本公認心理師協会の倫理綱領に関するガイダンスは、面接等の記録を業務の終了後できるだけ速やかに作成するよう求めています。時間が空くと記憶が薄れ、事実と見立ての区別もあいまいになります。面接と面接のあいだに記録の時間を確保しておくと、後回しになりません。
日時・形式・参加者を必ず入れる
日時、面接時間、面接の形式(対面・オンライン・電話)、同席者の有無は毎回書きます。後から出来事の順序を確認するとき、この基本情報が土台になります。後から書き足したときは、書いた日時と出来事の日時を分けて残します。
書く量は「次の人が困らない」程度に
すべてを書き残すと、書く負担が増えて継続できません。判断に必要なこと、次回に必要なこと、安全に関わることを優先します。記録に時間がかかりすぎると、面接そのものに回せる力が減ってしまうからです。
書く時間と分量を決める
記録は、だらだらと長くなりがちです。1回あたりの文字数や行数の上限、書く時間をあらかじめ決めておくと、何を残すか選ぶ練習にもなります。記録を自宅に持ち帰って書く運用は、個人情報の管理と労務管理の両面で問題になりやすいため、所属先の規程に沿い、必要なら上司に相談してください。
訂正は元の記録が追える形で
誤記があった場合に、元の文を消して書き換えると、いつ何が変わったのかがわからなくなります。二重線を引いて日付とともに訂正する、追記として残すなど、元の記録が読み取れる形で直します。電子カルテでは、システム側の訂正履歴の扱いに従います。
第三者から得た情報と、わからないことの書き方
家族や関係機関から聞いた情報は、「誰から、いつ、どのような形で聞いたか」を添えて書き、相談者本人が語った内容と並べて残します。連絡がつかなかったときも、「拒否された」と決めつけず、連絡した日時と方法、つながらなかったという事実だけを書き、理由は不明と残します。引き継ぎのメモでは、確認できていることと、まだ確認できていないことを分けて書くと、次の担当者が動きやすくなります。
面談記録のひな形・テンプレート(項目例)
書式(様式)の決まりがない場合に使える項目例を、場面ごとに箇条書きで示します。そのまま使えるように作ってありますが、実際には所属先や対象に合わせて増減してください。初回面接で聞く項目の考え方は、インテーク面接とは?目的・流れ・聞くことと留意点を整理で確認できます。
初回(インテーク)記録の項目例
- 基本情報(日時、面接時間、形式、担当者、記録者)
- 相談者の属性(年齢、性別、職業や学年、同居家族など、必要な範囲)
- 来談経緯(誰の勧めか、紹介元、なぜいまなのか)
- 主訴(相談者の言葉に近い形で)
- 現在の状況(生活リズム、睡眠、食事、仕事や学校の様子)
- 既往歴・通院・服薬の状況、かかりつけ医の有無
- 家族・生育歴・職歴(主訴の理解に必要な範囲)
- 安全に関わる事項(自傷・他害・虐待・暴力の有無、緊急連絡先)
- 面接中の観察(表情、話し方、服装、関わり方)
- 見立ての仮説(事実と分けて記載)
- 説明と同意の内容(守秘とその限界、料金、キャンセル、記録の取り扱い)
- 今後の方針と次回の予定
毎回の面談記録の項目例
- 日時、面接時間、形式、同席者
- 前回からの変化(生活、症状、課題の取り組み)
- 今回扱った話題(相談者の言葉を含めて要点)
- 面接中の様子(観察した事実)
- 面接者が行った介入や応答の概要
- 見立て・気づき(事実と分けて)
- 安全面の確認(必要な場合)
- 次回までの課題・約束事
- 次回の予定とテーマ
経過・終結時の記録の項目例
- 支援期間、面接回数、主な経過
- 当初の主訴と目標に対する現在の状態
- 実施した主な支援の内容
- 終結または中断の理由と経緯
- 紹介や連携の有無、引き継いだ内容
- 今後に残る課題と、再相談の窓口の案内
記録と同意書・契約書の違い
面接の経過を残す記録と、面接の前に取り交わす同意書や契約書は、目的の違う文書です。契約内容や同意の取得は記録にも残しますが、同意書そのものが記録の代わりになるわけではありません。両者を混同せず、それぞれの保管場所と期間を決めておきます。
SOAP形式で書く場合
SOAP は、医療で広く使われる記録の型です。心理の現場でも、医療機関を中心に使われることがあります。
SOAPの4項目
- S(Subjective:主観的情報): 相談者が語った訴え、感じていること
- O(Objective:客観的情報): 面接者が観察した様子、検査結果、測定できる事実
- A(Assessment:評価・見立て): S と O を踏まえた面接者の判断
- P(Plan:計画): 次回以降の方針、課題、連携
SOAPで書くときのコツ
SOAP の強みは、事実(S・O)と見立て(A)を、型の力で自然に分けられる点です。慣れていない間は、O に面接者の解釈が入りやすいので、「見えたこと・聞こえたこと」だけを書くよう意識します。S は、相談者の言葉に近い形で、重要な発言は「」で残します。
心理面接では、1回の面接の中で話題が複数にわたることが多く、1枚の SOAP に収まらないことがあります。その場合は、S と O をまとめて要点に絞り、A と P を丁寧に書くと、読み手に必要な情報が残ります。
面談記録・SOAP・逐語録の違い
名前の似た記録が複数あるため、役割の違いを整理します。
逐語録との違い
逐語録は、面接のやりとりを、発言のとおりに(できる限り省略せずに)文字に起こしたものです。主に事例検討やスーパービジョン、研究・研修で、面接者の応答の細部を検討するために作ります。日常の面接記録とは目的が異なります。
- 面談記録(経過記録): 1回ごとの要点と経過を残す。日常的に書く
- SOAP: 面談記録を型で整理したもの。事実と見立てを分けやすい
- 逐語録: やりとりをそのまま再現する。検討の場面で必要なときだけ作る
逐語録を作るときの注意
面接を録音して逐語録を作る場合は、事前に相談者の了解を得ます。日本臨床心理士会の倫理綱領(第2条)も、面接や心理査定の場面をテープやビデオ等に記録する場合は、対象者の了解を得たうえで行うことを求めています。
また、逐語録は個人が特定されやすい情報の塊です。事例検討などで使う場合は、固有名詞や特定につながる情報を伏せ、配布した資料の回収や廃棄の方法まで決めておきます。事例を公表する場合の同意や特定されない工夫についても、日本臨床心理士会の倫理綱領(第7条)に定めがあるため、所属団体の綱領を確認してください。面接で知り得た秘密の扱いと例外は、公認心理師の守秘義務とは?例外・罰則・通告の整理を参照してください。
記録の保存期間
保存期間は「どの立場で、どの記録か」で根拠が変わります。ここでは、条文などで確認できた範囲を一般論として整理します。個別の判断は、所属先の規程を確認し、必要に応じて上司や専門家に相談してください。
公認心理師法と倫理綱領
公認心理師法には、心理職が作成する面接記録の保存期間を定めた規定は、条文を確認した範囲では見当たりませんでした。一方、日本臨床心理士会の倫理綱領は、第4条で、面接等の記録について、原則として対象者との面接等の最終日から5年間保存しておくとしています。
日本公認心理師協会の倫理綱領は、第7条で適切な記録作成・保管に努めることを定めるにとどまり、期間そのものは書かれていません。同協会の倫理綱領に関するガイダンスは、保管期間は所属機関で定められていることが望ましいとしたうえで、原則として支援終了後5年間の保管を目安とする、と示しています。法令上の義務というより、職能団体が示す目安である点に注意してください。
医療機関で働く場合
医療機関では、診療録(カルテ)について、医師法第24条第2項が、病院または診療所に勤務する医師の診療に関するものは、その病院または診療所の管理者が5年間保存すると定めています。また、保険医療機関及び保険医療養担当規則第9条は、療養の給付の担当に関する帳簿・書類その他の記録を完結の日から3年間、患者の診療録は完結の日から5年間保存すると定めています。
心理職が作成した面接記録がこれらの対象になるか、診療録とは別の記録として扱うか、どこに保管するかは、医療機関ごとの運用によります。所属先の規程を確認してください。
開業・相談室など医療機関以外の場合
医療機関以外では、心理職の記録の保存期間を直接定めた法律は、確認した範囲では見当たりません。そのため、倫理綱領やガイダンスが示す5年を目安に、自分の相談室の規程として保存期間を決めて文書化しておく方法があります。保存期間が終わった記録は、復元できない方法で廃棄します。紙は裁断、電子データは完全消去とし、廃棄した日付も残しておくと説明しやすくなります。個人情報保護法第22条は、個人情報取扱事業者に、利用する必要がなくなった個人データを遅滞なく消去する努力義務を課しています。あわせて、前記のガイダンスは、保管場所、廃棄、持ち出し、ウェブ上の流出への対応に万全を期すこと、記録者が複数いる場合は記録の管理者を定めることを求めています。
開示請求への備え
相談者やその代理人から、記録を見せてほしいと求められることがあります。慌てないために、日ごろから備えておく点を整理します。
開示の根拠になりうるもの
日本臨床心理士会の倫理綱領は、第4条で、対象者から面接の経過や心理査定結果などの情報開示を求められた場合は、原則としてそれに応じるとしています。日本公認心理師協会のガイダンスも、本人からの記録開示請求には基本的に応じること、第三者への開示には要支援者の同意が必要で、同意は開示請求者の範囲・開示項目・開示方法を明示して受けることを示しています。同ガイダンスは、支援者自身の判断や考察にあたる記載が直ちに開示の対象になるかは議論が残るとも述べており、機関ごとに開示対象とする記録をあらかじめ検討しておくことを勧めています。さらに、民間の事業者など個人情報取扱事業者に当たる場合は、個人情報保護法第33条により、本人が識別される保有個人データの開示を請求でき、事業者は遅滞なく開示しなければならない一方で、本人や第三者の生命・身体・財産その他の権利利益を害するおそれがある場合などには、全部または一部を開示しないことができると定められています。なお、公的機関に所属する場合は、同法の別の規定や条例が適用されることがあります。
どの法令が適用されるかは、働く場(医療機関、行政機関、学校、民間の相談室など)によって異なります。開示の可否や範囲の判断は、所属先の規程を確認し、必要に応じて上司・弁護士などに相談してください。
日ごろの記録で備えておくこと
開示を前提にすると、記録の書き方に次のような工夫が考えられます。
- 事実と見立てを分けて書く。開示されても誤解されにくくなる
- 評価語や感情的な表現を避け、行動や発言で書く
- 第三者(家族、関係者)から得た情報は、出所がわかるように書く
- 第三者の個人情報を含む部分を、必要に応じて別に管理する
- 面接者個人のメモや私的な感想と、正式な記録を分けておく
開示を求められたときの流れ
開示の求めがあったとき、一人で判断せず、所属先の担当者や上司に共有します。本人確認、請求の範囲、開示の方法、開示しない部分があるかの検討を、所属先の手順に沿って進めます。相談者の状態によっては、開示の際に面接者が同席して説明するなど、受け止めやすい形を検討します。
記録のよくある失敗と直し方
実務でよくある書き方の失敗と、直し方の例です。
- 事実と見立てが混ざっている: 「抑うつ的で意欲がない」を、「『何もする気になれない』と話した」「表情の変化が乏しかった」と、発言と観察に分け、見立ては別に書く
- 曖昧な表現が多い: 「特に変わりなし」を、「睡眠は前回と同じく5時間程度と本人が話した」のように具体的にする
- 書きすぎて続かない: 全部を書こうとせず、判断・安全・次回に必要なことに絞る
- 個人情報の管理が甘い: ファイル名に氏名を入れない、共有先と同意範囲を記録する、持ち出しの規程を守る
- 後から書き足した記録が区別できない: 書いた日時と出来事の日時を分けて残す
よくある質問
カウンセリング記録について、よく聞かれる疑問に答えます。
Q. カウンセリングの記録はどのように書けばよいですか?
事実(相談者の発言・観察)と、見立て(面接者の解釈)、計画(次にすること)を分けて、短く具体的に書くのが基本です。日時・形式・参加者を毎回入れ、根拠になる発言は「」で残します。所属先に様式があればそれに従います。
Q. 面談記録と逐語録は何が違いますか?
面談記録は1回ごとの要点と経過を残す日常の記録で、逐語録はやりとりをできる限りそのまま文字にしたものです。逐語録は事例検討やスーパービジョンなどで必要なときに作り、録音する場合は事前に相談者の了解を得ます。
Q. SOAP形式は心理カウンセリングでも使えますか?
使えます。S(主観的情報)、O(客観的情報)、A(評価・見立て)、P(計画)の4項目に分けるため、事実と見立てを区別しやすいという利点があります。ただし、様式は所属先によって異なるので、決まりがあればそれに合わせます。
Q. カウンセリング記録の保存期間はどのくらいですか?
日本臨床心理士会の倫理綱領は、原則として面接等の最終日から5年間の保存としており、日本公認心理師協会のガイダンスも支援終了後5年間を目安としています。心理職の記録について期間を直接定めた法律は、確認した範囲では見当たりません。医療機関では、診療録について医師法や保険医療養担当規則に保存期間の定めがあります。どれが適用されるかは所属先によって異なるため、規程を確認してください。
Q. 相談者から記録の開示を求められたらどうしますか?
倫理綱領は原則として応じるとしており、個人情報保護法に基づく開示請求の対象になる場合もあります。一方、開示によって本人や第三者の権利利益を害するおそれがある場合などは、一部を開示しないことができる定めもあります。一人で判断せず、所属先の規程を確認し、上司や専門家に相談してください。
Q. 面接中にメモを取ってもよいですか?
メモを取ること自体は多くの現場で行われています。事前に「記録のためにメモを取ってもよいか」を相談者に伝え、了解を得ておくと安心です。メモの保管や廃棄の方法も、記録の一部として決めておきます。開示を求められる場面でメモがどう扱われるかは所属先によって異なるため、あらかじめ確認しておくと慌てません。
まとめ
カウンセリング記録は、面接の連続性、引き継ぎ、説明責任のために、事実・見立て・計画を分けて残すものです。要点は次の3つです。
- カウンセリング記録の書き方の基本は、事実(発言・観察)と見立てを分け、根拠になる発言は「」で残し、評価語を避けて具体的に書くこと
- 面談記録・SOAP・逐語録は役割が違い、日常は面談記録か SOAP、検討の場面だけ逐語録を作る。ひな形は初回・毎回・終結時で項目を変える
- 保存期間と開示請求は、働く場の規程と法令で変わるため、職能団体が示す5年保存の目安と原則開示を踏まえて、所属先の規程を確認して備える
記録は、相談者を守り、面接者自身を守り、次の支援につなぐための道具です。完璧な記録を目指すより、事実と見立てを分けて続けられる形を、自分の現場で整えてください。



