臨床心理士の指定大学院とは?一種・二種の違いと選び方

臨床心理士の指定大学院とは?一種・二種の違いと選び方

臨床心理士の指定大学院の仕組みを日本臨床心理士資格認定協会の公表資料で整理。一種と二種の違い、専門職大学院、最新の一覧と地域別の校数の見方、公認心理師の養成大学院との違い、選び方を解説します。

臨床心理士の指定大学院とは、日本臨床心理士資格認定協会が「臨床心理士の養成課程として適切」と認めて指定した大学院のことです。臨床心理士の試験を受けるには、この指定大学院(第1種・第2種)か、臨床心理分野の専門職大学院を修了するのが基本で、選ぶときは「第1種か第2種か」「実習の体制」「公認心理師にも対応しているか」の3点を確認します。

この記事では、協会の公表内容をもとに、指定大学院の仕組み、一種と二種の違い、専門職大学院との違い、公認心理師の養成大学院との違い、選び方の順番を整理します。大学名は挙げません。最新の一覧は協会のページで確認してください。

この記事でわかること

  • 臨床心理士の指定大学院の仕組みと、一種・二種・専門職大学院の違い
  • 指定大学院の数と、最新の一覧や地域ごとの校数の見つけ方
  • 公認心理師の養成大学院とは別の制度であることと、両方に対応しているかの確かめ方
  • 実習先・教員・通いやすさ・学費などの選び方と、確認する順番
  • 難易度・通信・社会人枠について、どこで何を調べればよいか

臨床心理士の指定大学院とは何か

指定大学院は、臨床心理士の受験資格につながる大学院を協会が審査して指定する仕組みです。ここでは、制度の成り立ちと、指定のために見られる点を整理します。

指定大学院制度のしくみ

協会の説明によると、指定大学院制度が始まったのは1996年(平成8年)度です。協会は、臨床心理学を専攻する修士課程のうち、教員の体制、授業科目、実習の場などの条件を満たすものを審査し、臨床心理士を育てる課程として指定します。2007年(平成19年)度以降の資格試験からは、医師と海外の大学院の修了者を除いて、協会の指定を受けた修士課程(博士前期課程)で学び終えることが、受験の前提になりました。

つまり、大学院なら何でもよいわけではありません。「臨床心理学」を掲げていても、指定を受けていない大学院を修了しただけでは、臨床心理士の受験資格につながらない点に注意が必要です。また、指定されるのは研究科全体ではなく、臨床心理学に特化した専攻・コース・領域です。同じ研究科の別のコースに入学しても、指定の対象にはなりません。

修了までに必要な科目と修士論文

協会が公表している大学院指定運用内規では、受験資格の証明を受けるために、必修科目(臨床心理学特論、臨床心理面接特論、臨床心理査定演習、臨床心理基礎実習、臨床心理実習)の5科目16単位と、研究法・発達・社会・医学・臨床技法などの5つの科目群(A〜E群)から各2単位以上、合わせて26単位以上を修めることが求められています。修士論文は臨床心理学に関するテーマであること、指導教員の1名以上が臨床心理士であることも条件です。

臨床心理実習は、学内外の実習施設で受理面接、心理査定、心理面接などを実際に行い、ケースカンファレンスやスーパービジョンを含むものとされています。入学前に、こうした実習が2年間のどの時期に組まれているかを大学院の案内で確かめておくと、学生生活の見通しが立てやすくなります。

指定は6年ごとに見直される

指定は審査のうえで6年間です。協会の説明では、3年目に実地視察による中間評価があり、6年目に指定継続審査を受けます。見られるのは、指定領域の組織構成、担当教員の数と内容、臨床心理実習と有料の附属臨床心理相談室などの施設と運営の実態、学外実習施設の整備状況、教育カリキュラムに基づく授業の実施状況などです。

指定を受けていた大学院が、のちに区分が変わったり指定を外れたりすることもあります。入学を考える時点で、その大学院が今も指定を受けているか、どの区分かを、協会の最新の一覧で確かめます。

指定大学院は全国に何校あるか

協会の「臨床心理士養成に関する指定大学院」のページでは、2026年(令和8年)4月1日現在、全国で151大学院が指定を受けています。協会の指定大学院一覧(同日現在)では、その内訳は第1種が144校、第2種が7校です。これとは別に、臨床心理士養成のための専門職大学院が4校(2025年4月1日現在)あります。校数は年によって変わるので、進学を考える年に最新の一覧を見てください。

臨床心理士の指定大学院、一種と二種はどう違うか

一種と二種のいちばん大きな違いは、修了後に受験できる時期です。あわせて、指定を受けるための基準にも差があります。ここでは、協会の受験資格基準と指定の基準をもとに整理します。

第1種指定大学院と第2種指定大学院の違い

協会は臨床心理士資格認定事業のページで、受験資格基準を7種に分けて示しています。このうち、大学院修了に関わるものは次のとおりです。

  • 第1種指定大学院を修了した人: 修了後の心理臨床経験は不要で、受験資格取得のための所定条件を満たせば受験できます(いわゆる新1種指定校)
  • 第2種指定大学院を修了した人: 修了後1年以上の心理臨床経験を含む所定条件が必要です(いわゆる新2種指定校)
  • 専門職学位課程を修了した人: 臨床心理学またはそれに準ずる心理臨床の分野を専攻する専門職学位課程の修了が対象です

過去に指定の区分が変わった大学院の修了者には、旧1種(修了後1年以上)や旧2種(修了後2年以上)の基準が当てはまる場合があります。自分の入学する大学院の区分は、募集要項と協会の最新の一覧で確認してください。

指定の基準はどう違うか

協会の大学院指定運用内規では、第1種と第2種で、教員と実習の場の条件が次のように分かれています。

  • 第1種: 臨床心理士の資格を持つ担当教員が5名以上、そのうち専任教員が4名以上(教授2名以上)。1年以上の活動実績がある附属の臨床心理相談室(原則有料)を持ち、学外の実習施設も整えること
  • 第2種: 臨床心理士の資格を持つ担当教員が4名以上、そのうち専任教員が3名以上(教授1名以上)。附属の臨床心理相談室か、大学院が委嘱して定期的に実習を行う学外施設などを持つこと

必修科目や修士論文の条件は、第1種と第2種で同じ扱いです。違いは主に、教員の人数と、学内の相談室で実習できる体制にあります。

第2種の新しい指定は終わっている

協会の資格審査規程の附則と指定申請の手引によると、第2種の新たな指定は2008年(平成20年)度で終わり、2009年(平成21年)度からは第1種の申請だけを受け付けています。第2種が7校と少ないのはこのためで、いまある第2種の大学院は、それより前に指定を受けたところです。

心理臨床経験とは何を指すか

二種で求められる「心理臨床経験」は、教育相談機関、病院などの医療施設、心理相談機関などで、心理臨床に関する従業者(心理相談員、カウンセラーなど)として勤務した経験を基準とします。協会は有給を原則としており、ボランティアや研修員は認められないとしています。

そのため、第2種を選ぶ場合は「修了後に1年以上、有給で心理臨床の仕事に就けるか」まで含めて計画を立てる必要があります。働き口は地域や時期で変わるので、断定はできません。就職先の見通しは、大学院の修了生の進路の説明などで確認しておくと安心です。

試験の形と受験の時期

協会の説明では、臨床心理士の資格審査は年に一度、一次試験(筆記試験)と二次試験(口述面接試験)が、例年10月から12月にかけて東京で実施されます。毎年約2,000名が受験しているとされています。試験の日程や出願の手続きは年によって変わるため、協会の資格審査のスケジュールで最新を確認してください。

専門職大学院は指定大学院と何が違うか

臨床心理分野には、専門職学位課程の大学院(専門職大学院)もあります。ここでは、指定大学院との違いと、数の少なさを整理します。

専門職大学院の特徴と受験資格

協会の説明によると、臨床心理分野の専門職大学院が初めて開設されたのは2005年4月です。修了すると学位は「臨床心理修士(専門職)」になります。履修する単位は44単位以上で、指定大学院の「修士論文と26単位以上」より多く、実習を中心とした実践的な学びと、専任教員の手厚さが求められます。

受験の時期は第1種と同じで、修了した年度のすぐ後に行われる資格試験を受けられます。さらに、一次試験のうち小論文が免除されます。

専門職大学院はごく少数

協会のページには、臨床心理士養成のための専門職学位課程は、2025年4月1日現在4校が設置されていると書かれています。指定大学院の151校と比べるとごく少数で、所在地も限られます。通える範囲に選択肢があるかどうかは、協会の一覧で確認します。

修士論文が必須の指定大学院と、実習中心の専門職大学院では、学び方の重心が違います。研究に進む可能性があるか、実践にしぼって学びたいかも、選ぶ軸になります。

臨床心理士の指定大学院の一覧は、どこで見るか

大学院の名前を調べるときは、まず協会の一覧を見ます。ここでは、一覧の探し方と、見るときの注意点をまとめます。

日本臨床心理士資格認定協会の一覧を見る

一覧のPDFは、協会サイトの「臨床心理士になるには」の中の「受験資格」のページにある「臨床心理士受験資格に関する指定大学院・専門職大学院一覧」から開けます。第1種と第2種ごとに、所在県、国立・公立・私立などの種別、大学院名、研究科名、専攻名、領域(コース)名が並び、最後に専門職大学院4校も載っています。指定大学院の制度の説明は、同じサイトの「臨床心理士養成に関する指定大学院」のページにあります。

一覧には、通信制かどうか、夜間があるか、社会人向けの枠があるかといった情報は載っていません。これらは大学院の募集要項や説明会で確認します。

関東・関西など地域で探すとき

住んでいる地域で探すときは、協会の「臨床心理士資格認定事業」のページにある「都道府県別・臨床心理士数と指定大学院・専門職大学院数一覧表」が役に立ちます。2026年4月1日現在の表では、指定大学院は東京都をはじめとする関東や、愛知県、京都府などに多く集まっています。一方で、青森県、富山県、福井県、滋賀県のように、指定大学院も専門職大学院もない県があります。

県内に候補がない場合は、隣の県まで含めて一覧を見ます。実習で平日の日中に何度も通うことになるため、地図上の距離だけでなく、通学にかかる時間と交通費まで考えて候補を絞ります。

民間サイトの一覧を使うときの注意

検索すると、指定大学院をまとめた民間のサイトも出てきます。便利ですが、更新が遅れていたり、指定の区分が古いままだったりすることがあります。民間の一覧は候補を探すために使い、区分や指定の有無は必ず協会の一覧で確認します。

公認心理師の養成大学院とは何が違うか

臨床心理士の指定と、公認心理師の受験資格は、別々の制度です。ここを混同したまま進学すると、片方の資格にしかつながらないことがあります。くわしくは公認心理師と臨床心理士の違いで整理しています。

公認心理師は法律で決まる制度

公認心理師の受験資格は公認心理師法第7条に定められています。大学院ルートでは、大学で施行規則第1条の2の科目(25科目)を修めて卒業し、大学院で施行規則第2条の科目(10科目)を修めて修了する必要があります。大学院の科目のうち心理実践実習は、施行規則第2条で450時間以上と定められています。この仕組みは国の制度で、臨床心理士の指定大学院とは別の基準です。

両方に対応しているかの確かめ方

臨床心理士の指定を受けているからといって、公認心理師の科目も開講しているとは限りません。逆も同じです。両方を目指すなら、次の2つを別々に確認します。

  • 臨床心理士: 協会の指定大学院一覧に載っているか、第1種か第2種か
  • 公認心理師: 厚生労働省のページに掲載されている大学等の一覧(大学院)に載っているか

厚生労働省の公認心理師のページでは、公認心理師となるために必要な科目を開講している大学等の一覧(2026年4月1日時点)が公表されています。両方の一覧に載っていても、大学院が「両方の受験資格を得られる」と説明しているかは、募集要項で確認します。実習が公認心理師の450時間と臨床心理士の実習をどう兼ねるかも、大学院ごとに違います。

公認心理師を目指す場合は、大学院に入る前の学部段階の科目も要件になります。この点は、社会人の進学を扱った別の記事でも触れています。

臨床心理士の指定大学院の選び方

指定大学院の選び方は、「受験資格につながるか」を確認した後に、通い続けられるかを具体的に見ていく流れです。ここでは、確認する点を順番に並べます。

まず確認する3つの条件

最初に、候補が条件を満たすかを確認します。

  • 協会の最新の一覧に載っているか、第1種か第2種か
  • 公認心理師の受験資格にも対応しているか(必要な場合)
  • 自分の学歴で出願できるか(心理学の学部出身でなくても出願できるか、出願資格の確認)

この3つで外れる大学院は、他の条件が良くても候補から外します。あわせて、出願する専攻・コースが、一覧に載っている指定の専攻・領域と同じかも見ます。協会の指定申請の手引では、指定を受ける課程の入試はその専攻等で募集・出題・判定し、募集要項に明記することとされています。出願する枠が臨床心理士の受験資格に対応しているかを募集要項で確かめておけば、取り違えを防げます。

実習先・教員・附属相談室を見る

臨床心理士の養成では、学外の実習先と学内の附属相談室での実習が学びの中心になります。協会の指定審査でも、有料附属臨床心理相談室の運営実態や学外実習施設の整備状況が見られています。大学院の案内では、次の点を確認します。

  • 実習の分野(医療、教育、福祉、司法、産業など)と、実習先の数や種類
  • 附属相談室での実習が、いつから、どのくらいの時間あるか
  • 指導する教員の専門領域と、修士論文の指導体制
  • 修了生の進路(どのような領域で働いているか)

実習先の個別の名前は、説明会や募集要項に載っている範囲で確認します。「実習先が多いこと」と「自分が学びたい領域の実習があること」は別の話なので、学びたい領域から逆算します。

通いやすさと学費を見る

修士課程の標準修業年限は2年です(大学院設置基準第3条第2項)。実習は日中に行われることが多いため、通う距離や時間は実際の負担に直結します。

学費は、国立・公立・私立で大きく変わります。国立大学の場合、国立大学等の授業料その他の費用に関する省令第2条では、大学院の研究科の標準額が授業料の年額535,800円、入学料282,000円と定められています。各国立大学法人はこれを標準として額を定めます。私立の場合は大学ごとに違うため、募集要項の学納金の欄で、授業料のほか実習費や諸経費を確認します。「学費安いところ」を探す場合も、実習費や交通費まで含めた総額で比べます。

難易度は偏差値では測れない

「難易度」を調べるとき、大学院には学部のような共通の偏差値がなく、協会などが公表している公的なランキングもありません。入試の形は大学院ごとに違い、専門科目、英語、研究計画書、面接などの組み合わせが変わります。志願者数や合格者数が公表されているかどうか、過去問が入手できるかどうかも、大学院ごとの募集要項や入試説明会で確認します。入試の対策そのものは心理系大学院の入試対策の記事で扱います。

通信や社会人でも指定大学院に通えるか

働きながらの進学や、通学が難しい人の選択肢についても、よく調べられています。ここでは、確認する範囲を整理します。

通信制の指定大学院はあるか

協会の一覧には、通信制かどうかは載っていません。臨床心理士の養成では実習が必須のため、授業を通信やオンラインで受けられても、実習は実習先や附属相談室へ通う形になることが一般的です。通信やオンライン中心で臨床心理士の受験資格を得られるかは、各大学院の募集要項で確認し、不明な点は大学院に問い合わせます。

社会人が働きながら通う場合

社会人入試や夜間開講、長期履修の有無も、大学院ごとに違います。ただし、実習の時間をどう確保するかは、どの大学院でも共通の課題です。仕事との両立の考え方、社会人入試、学費を軽くする仕組みは、社会人の大学院進学を扱った別の記事に詳しくまとめています。この記事では重ねて書きません。

よくある質問

Q. 臨床心理士の指定大学院は、全国にいくつありますか?

協会のページによると、2026年4月1日現在で151大学院です。指定大学院の一覧(同日現在)では、第1種が144校、第2種が7校です。ほかに、臨床心理分野の専門職大学院が2025年4月1日現在で4校あります。校数は変わるため、最新は協会のページで確認してください。

Q. 一種と二種で、どちらを選ぶべきですか?

修了後すぐに受験したいなら、第1種指定大学院か専門職大学院です。第2種は、修了後1年以上の有給の心理臨床経験が必要になります。なお、第2種の新しい指定は2008年度で終わっており、いまの指定大学院のほとんどは第1種です。ただし、一種か二種かの前に、実習の体制や通いやすさも含めて総合的に選びます。区分は大学院の説明と協会の一覧で確認してください。

Q. 指定大学院を修了すれば、公認心理師の受験資格も得られますか?

自動的には得られません。公認心理師は、公認心理師法と施行規則で定められた科目を、大学と大学院で修めることが要件です。厚生労働省の大学等一覧で、その大学院が公認心理師の科目を開講しているかを確認し、大学院の募集要項でも両方の受験資格に対応しているかを確かめます。

Q. 心理学部以外の出身でも、指定大学院に入れますか?

出願資格や入試科目は大学院ごとに違い、心理学の基礎知識を問う専門科目が課されることが多いです。出身学部で一律に決まるわけではないため、募集要項の出願資格を確認します。公認心理師も目指す場合は、学部段階の科目要件が別にあります。

Q. 指定大学院の一覧はどこで見られますか?

日本臨床心理士資格認定協会のサイトの「受験資格」のページから、指定大学院・専門職大学院の一覧のPDFを見られます。都道府県ごとの校数は、「臨床心理士資格認定事業」のページの都道府県別一覧表で確認できます。

まとめ:臨床心理士の指定大学院は「区分・実習・両資格の対応」で選ぶ

臨床心理士の指定大学院を選ぶときの要点は、次の3つです。

  • 臨床心理士の受験資格は、協会が指定した第1種・第2種の指定大学院、または専門職大学院の修了が基本で、第1種と専門職大学院は修了後すぐに、第2種は修了後1年以上の有給の心理臨床経験を経て受験できる
  • 指定の有無と区分は協会の最新の一覧(2026年4月1日現在で151大学院)で確認し、公認心理師の対応は厚生労働省の一覧と募集要項で別に確認する
  • 実習の体制、教員、通いやすさ、学費を総額で比べ、難易度は偏差値ではなく募集要項と説明会で確かめる

臨床心理士の指定大学院は、一覧の名前より、そこでどんな実習を積めるかで差がつきます。まず協会の一覧で候補を絞り、募集要項と説明会で自分の条件に合うかを確かめるところから始めてください。