公認心理師と臨床心理士の違いを簡単に比較【進路の選び方】

公認心理師と臨床心理士の違いを簡単に比較【進路の選び方】

公認心理師と臨床心理士の違いを、国家資格と民間資格、取得ルート、更新の観点から公的情報で整理。認定心理士・臨床発達心理士との違いや、両方取るべきかの判断軸もわかりやすく解説します。

公認心理師と臨床心理士の違いを簡単に言うと、公認心理師は公認心理師法にもとづく国家資格、臨床心理士は日本臨床心理士資格認定協会が認定する民間資格です。どちらが上という関係ではなく、資格の根拠、取得ルート、更新の有無が異なります。

この記事では、心理職を目指す大学生・大学院生や、資格取得を考え始めた方に向けて、2つの資格の違いを公的な情報にもとづいてわかりやすく整理します。

この記事でわかること

  • 公認心理師と臨床心理士の違い(資格の性格・取得ルート・試験・更新)
  • 認定心理士、臨床発達心理士、心理カウンセラーとの違い
  • 年収の違いを考えるときの見方
  • 両方取るべきかを判断する視点

公認心理師と臨床心理士の違いを簡単に整理

まず全体像をつかむために、違いをいくつかの軸に分けて見ていきます。細かい条件は後の見出しで確認します。

違いをわかりやすくひとことで言うと

2つの資格のいちばん大きな違いは、資格の根拠です。

  • 公認心理師: 公認心理師法という法律にもとづく国家資格。文部科学省と厚生労働省が所管し、心理職として初めての国家資格です
  • 臨床心理士: 日本臨床心理士資格認定協会が実施する試験に合格して認定される民間資格。認定は1988年(昭和63年)に始まりました

そのほか、取得ルートの入口、5年ごとの更新の有無、法律で決められた義務の有無などが違います。

違いを5つの観点で見る

観点ごとに、次のように整理できます。

  • 根拠: 公認心理師は法律、臨床心理士は協会の認定制度
  • 取得の入口: 公認心理師は大学・大学院で定められた科目を修めるなどして国家試験を受験、臨床心理士は協会が指定する大学院の修了などを経て資格試験を受験
  • 更新: 公認心理師には法律上の更新制度はなく、臨床心理士は5年ごとに更新
  • 名乗りの制限: 公認心理師は名称独占(資格のない人は名乗れない)
  • 法律上の義務: 公認心理師には秘密保持義務などが法律で定められている

どちらの資格も、心理学の知識と技術にもとづいて人の心の問題を支援する専門職の資格という点は共通しています。

資格の性格の違い:国家資格と民間資格

国家資格か民間資格かは、資格の根拠と、その資格が持つ法的な意味を左右します。ここでは両資格の位置づけを確認します。

公認心理師は名称独占の国家資格

公認心理師法は2017年(平成29年)9月15日に施行されました。公認心理師は、登録を受けたうえで「公認心理師」の名称を用いて、次の4つの行為を業として行う人と定められています。

  • 心理に関する支援を要する人の心理状態を観察し、その結果を分析すること
  • 支援を要する人に、その心理に関する相談に応じ、助言、指導その他の援助を行うこと
  • 支援を要する人の関係者に、相談に応じ、助言、指導その他の援助を行うこと
  • 心の健康に関する知識の普及を図るための教育および情報の提供を行うこと

公認心理師でない人は「公認心理師」の名称を使えず、名称中に「心理師」の文字を用いることもできません(公認心理師法第44条)。これが名称独占の意味です。名称独占は、名乗りだけを制限する仕組みで、心理的支援の仕事そのものが公認心理師だけに許されるという意味ではありません。

登録者数は、厚生労働省公認心理師制度推進室による解説で2025年(令和7年)3月末時点73,743人、日本学術会議の報告(2026年8月28日)で2026年(令和8年)6月末日現在76,547名とされています。

臨床心理士は協会が認定する民間資格

日本臨床心理士資格認定協会は、臨床心理士を「臨床心理学にもとづく知識や技術を用いて、人間の心の問題にアプローチする心の専門家」と説明しています。資格は、協会の実施する試験に合格し、認定を受けることで取得します。

協会は、臨床心理士に求められる専門行為として、心理査定、面接による援助、地域の心の健康活動に関わるコーディネーションやコンサルテーション、そして臨床心理に関する研究・調査の4つを挙げています。公認心理師の4行為と重なる部分が多く、現場での活動分野(医療、教育、福祉、産業、司法など)も共通しています。

取得ルートと更新の違い

資格を取るまでの道筋と、取った後の維持の仕方も大きく異なります。進路選びに直結するので、ここは丁寧に見ておきましょう。

公認心理師になるには:試験の受験資格と登録

公認心理師になるには、国家試験に合格し、登録を受ける必要があります。受験資格は公認心理師法第7条に定められており、大きく分けて次のとおりです。

  • 大学で必要な科目を修めて卒業し、さらに大学院で必要な科目を修めて修了した人(いわゆる大学+大学院ルート)
  • 大学で必要な科目を修めて卒業し、定められた施設で定められた期間以上、心理支援の業務に従事した人(大学+実務経験ルート)
  • 文部科学大臣および厚生労働大臣が、上記と同等以上の知識および技能を有すると認定した人

どのルートでも、「公認心理師となるために必要な科目」を修めたかどうかが問われます。大学や大学院を選ぶときは、公認心理師の科目に対応したカリキュラムかどうかを、各校の案内で確認してください。試験は、国の指定を受けた指定試験機関(公認心理師試験研修センター)が実施しています。社会人として大学院に進む場合の選び方は、社会人から心理系大学院へを参照してください。

公認心理師試験の合格率の目安

公認心理師試験の結果は、厚生労働省が回ごとに公表しています。厚生労働省の発表では、第8回(2025年3月2日実施)は受験者2,174人、合格者1,454人で合格率66.9%、第9回(2026年3月1日実施)は受験者2,400人、合格者1,441人で合格率60.0%でした。合格基準や正答資料は、公認心理師試験研修センターのサイトで公表されます。試験対策の進め方は、公認心理師試験の勉強法にまとめています。

受験区分や年度で合格率は変わるため、受験を考える段階で最新の発表を確認してください。臨床心理士の試験の合格率は、協会の公表資料で確認できます。

臨床心理士になるには:指定大学院と資格試験

臨床心理士になるには、協会の資格試験に合格する必要があります。受験資格には複数の区分があり、協会が指定する大学院(第1種・第2種)を修了した人、専門職大学院を修了した人、医師免許を取得して一定の心理臨床経験をもつ人などが対象です。区分によって、修了後の心理臨床経験が必要かどうかが異なります。

協会の「臨床心理士養成に関する指定大学院」のページによると、指定大学院は2026年(令和8年)4月1日現在で全国151大学院です。校数は毎年変わるため、最新の一覧は協会のページで確認してください。受験資格の詳細は区分ごとに条件が違うため、必ず協会の最新の案内で確認してください。

更新制度の違い

臨床心理士の資格は5年ごとの更新制です。協会の説明では、研修会への参加や研究論文の公刊などでポイントを積み、必要な基準を満たすことで更新されます。

一方、公認心理師法には、臨床心理士のような更新制度の規定はありません。ただし、公認心理師は、業務内容の変化に対応するため知識と技能の向上に努めなければならないとされています(法第43条、資質向上の責務)。更新がないことは、学び続けなくてよいという意味ではありません。研修の選び方は、公認心理師の更新と研修|更新制度の有無と学び方も参考になります。

仕事内容と法律上の義務の違い

ここまでの説明で、仕事の中身が大きく違うわけではないことがわかります。実務上で意識したいのは、法律にもとづく義務があるかどうかです。

仕事内容に大きな差はない

公認心理師の4行為と、臨床心理士の4つの専門行為は、表現が違っても内容は近い部分が多くあります。実際の仕事内容は、資格の種類よりも、どの分野のどの職場で、どんな役割を担うかで決まります。

求人票では、募集要項に「公認心理師」「臨床心理士」のどちらか、または両方が応募資格として書かれることがあります。応募資格の書き方は職場ごとに違うため、志望先の募集要項を個別に確認することが確実です。就職先の分野ごとの特徴は、公認心理師の就職先で確認できます。

公認心理師に課される法律上の義務

公認心理師には、法律で次のような義務が定められています。

  • 信用失墜行為の禁止(第40条): 公認心理師の信用を傷つける行為をしてはならない
  • 秘密保持義務(第41条): 正当な理由なく、業務に関して知り得た人の秘密を漏らしてはならない。公認心理師でなくなった後も同様
  • 連携等(第42条): 保健医療、福祉、教育などの関係者と連携を保つ。支援に関わる主治の医師がいるときは、その指示を受ける
  • 資質向上の責務(第43条)

秘密保持義務に違反した場合、1年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金が定められています(第46条。告訴がなければ公訴を提起できない親告罪)。臨床心理士については、協会が「臨床心理士倫理綱領」の遵守を定めています。

どちらの資格でも、守秘や連携の判断に迷うときは、所属先の規程や関係法令を確認し、上司やスーパーバイザーなどに相談する姿勢が大切です。

医療分野での位置づけ

医療の現場では、公認心理師が診療報酬の制度に位置づけられている点も、実務上の違いとして話題になります。日本学術会議の報告(2026年8月28日)によると、2026年度(令和8年度)の診療報酬改定で、精神科専門療法の「認知療法・認知行動療法」の実施者に公認心理師が追加されました。算定の条件は細かく定められているため、志望先の医療機関で、どの資格の人がどの業務を担っているかを確認することが確実です。

認定心理士・臨床発達心理士・心理カウンセラーとの違い

似た名前の資格や呼び名が多く、混乱しやすいところです。それぞれの位置づけを整理します。

認定心理士との違い

認定心理士は、日本心理学会が認定する資格です。同学会は、心理学の専門家として仕事をするために必要な最小限の標準的基礎学力と技能を修得していると認定された人、と説明しています。大学で心理学の科目の単位を取ることがおもな条件で、学部卒業レベルの基礎学力を示す資格です。

公認心理師や臨床心理士のような、心理的支援の専門職としての資格とは役割が異なります。認定心理士の資格だけで公認心理師の受験資格が得られるわけではなく、受験資格は公認心理師法第7条と省令の定める科目の履修などで決まります。

臨床発達心理士との違い

臨床発達心理士は、臨床発達心理士認定運営機構が認定する資格です。同機構は、発達心理学を基礎とした、人の健やかな育ちを支援する専門家と説明しています。子育て、障害、不登校、発達障害などの発達をめぐる問題を対象に、子どもから成人・高齢期まで支援するとされ、資格は5年ごとの更新制です。

発達支援に強みをもつ資格で、公認心理師資格の取得者を対象にした専門講習会も用意されています。公認心理師や臨床心理士と並べて持つ人もいます。

心理カウンセラーとの違い

「心理カウンセラー」は、資格名というより職業の呼び名として使われることが多い言葉です。日本臨床心理士資格認定協会も、心理カウンセラー、サイコセラピスト、心理相談員などの名称で呼ばれる人々には、それぞれに明確な資格があるわけではないと説明しています。

公認心理師法で名乗りが制限されているのは、「公認心理師」の名称と、名称中の「心理師」の文字です。心理カウンセラーという呼び名自体は法律で制限されていないため、肩書だけでは専門性を判断できません。相談先を探す人にとっても、働く側にとっても、保有する資格を確認することが大切です。

公認心理師と臨床心理士の年収の違い

年収は気になる点ですが、資格の種類だけで決まるものではありません。ここでは違いの観点に絞って触れます。

資格名より勤務先と働き方が影響する

国の賃金統計には、公認心理師や臨床心理士という資格ごとの区分はありません。最新の厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」(2026年3月公表)では、医療施設で働く心理職は「その他の保健医療従事者」に含まれ、この区分の年収の目安はおよそ454万円です(月の給与の12か月分に賞与を足した計算。フルタイムの人の平均で、ほかの医療職も含みます)。資格を問わず、医療施設の心理職全体の目安として見てください。

公認心理師だけを対象にした国の調査(2019年度の年収)では、300万円以上400万円未満が最も多く(21.3%)、常勤か非常勤かで分布が大きく異なっていました。臨床心理士だけの年収を確認できる公開の公的な全国調査は、編集部の調べでは見つかりませんでした。そのため、2つの資格の年収を直接比べた数値は、この記事では示しません。

どちらの資格でも、同じ職場・同じ雇用形態であれば、仕事内容や待遇は資格名よりも職場の規定で決まることが多いと考えられます。

公認心理師と臨床心理士は両方取るべきか

結論から言うと、両方取るかどうかは、志望する分野と進路で決まります。両方の資格を持つ人もいるため、判断の視点を紹介します。

両方取るメリットと注意点

両方を取得するメリットは、応募資格の幅が広がること、資格ごとの研修やネットワークを活用できることです。たとえば、募集要項で臨床心理士を応募資格に挙げる職場にも、公認心理師を挙げる職場にも応募できます。

注意点は、時間と費用の負担です。臨床心理士は5年ごとの更新があり、研修への参加やポイントの取得が必要です。公認心理師も、継続的な学びが法律上求められています。

迷ったときの考え方

進路選びで迷ったら、次の順で考えると整理しやすくなります。

  • 志望する分野の求人や募集要項を見る: 応募資格にどちらが書かれているかを確認する
  • 大学院のカリキュラムを確認する: 公認心理師の科目と、臨床心理士の指定大学院のどちらに対応しているか、両方に対応しているかを調べる
  • 在学中の教員や先輩に聞く: 実習先や進路の実例を聞いて、自分の希望と照らし合わせる

どちらを選んでも、基礎的な学びが無駄になることはありません。まずは大学院選びの段階で、両方の道を開いておけるかを確認しておくと、後から選択肢が増えます。

よくある質問

公認心理師と臨床心理士の違いについて、よくある疑問に答えます。

Q. 公認心理師と臨床心理士の違いを簡単に言うと?

公認心理師は法律に根拠をもつ国家資格、臨床心理士は協会の認定による民間資格という違いがあります。取得ルートや更新制度、法律上の義務などが異なりますが、どちらも心理学にもとづいて心の支援を行う専門職の資格です。

Q. 公認心理師と臨床心理士はどちらが上ですか?

上下の関係はありません。それぞれ別の制度にもとづく資格です。就職や進路では、志望先がどちらの資格を応募資格にしているかが実際には重要になります。

Q. 公認心理師と臨床心理士の両方を取ることはできますか?

できます。両方の資格を持つ人もいます。大学院が両方の資格に対応しているかどうか、更新や研修の負担をどう考えるかを確認してから、計画を立てるとよいでしょう。

Q. 認定心理士があれば公認心理師の受験資格はありますか?

認定心理士の資格だけでは受験資格にはなりません。公認心理師の受験資格は、公認心理師法第7条と省令で定められた科目の履修や実務経験などで決まります。

Q. 心理カウンセラーと公認心理師は同じですか?

同じではありません。心理カウンセラーは職業の呼び名として使われる言葉で、特定の資格を指すとは限りません。公認心理師は、法律にもとづく国家資格です。

まとめ:公認心理師と臨床心理士の違いを押さえて進路を考えよう

公認心理師と臨床心理士の違いのポイントは次の3つです。

  • 公認心理師は法律にもとづく名称独占の国家資格、臨床心理士は日本臨床心理士資格認定協会が認定する民間資格で、どちらが上ということはない
  • 取得ルートと更新が異なる。公認心理師は国家試験と登録、臨床心理士は指定大学院の修了などを経た資格試験と5年ごとの更新
  • 認定心理士や臨床発達心理士は別の目的の資格で、心理カウンセラーは資格名ではない

迷ったときは、志望先の募集要項と、進学先のカリキュラムで確認するのが近道です。この記事で整理した違いを手がかりに、自分に合った進路を考えてみてください。

参考にした公的な情報は次のとおりです。