公認心理師の就職先は?5分野の特徴と新卒の探し方

公認心理師の就職先を保健医療・福祉・教育・司法犯罪・産業労働の5分野で整理。令和5年度の公的調査から分野別の割合、常勤と非常勤、臨床心理士との違い、新卒の探し方まで解説します。
公認心理師の就職先は、保健医療・福祉・教育・司法犯罪・産業労働の5分野と、私設相談機関や大学などの「その他」に広がっています。公的な調査では、主たる勤務先は教育・福祉・保健医療がそれぞれ2割台で、三つの分野で回答者全体の約4分の3を占めています。ただし、同じ分野でも常勤か非常勤か、心理職としての採用かどうかが職場によって大きく違うため、分野名だけでなく雇用の形まで見て選ぶことが大切です。
この記事では、厚生労働省の枠組みと公認心理師試験研修センター(旧・日本心理研修センター)の調査をもとに、就職先の全体像と選び方を整理します。
この記事でわかること
- 公認心理師の就職先が5分野でどう分かれているか
- 令和5年度の調査でわかる、分野ごとの割合と雇用形態の傾向
- 臨床心理士との就職先の違いと、年収を見るときの考え方
- 新卒(大学院修了前後)の探し方と、気をつけたい点
公認心理師の就職先は5分野に分かれる
公認心理師は、公認心理師法第2条で、「保健医療、福祉、教育その他の分野」において、心理学に関する専門的知識及び技術をもって一定の行為を行うことを業とする者と定められています。実務の整理では、保健医療・福祉・教育・司法犯罪・産業労働の主要5分野と、それ以外の「その他」に分けて考えるのが一般的です。
公認心理師の業務は、同じ第2条で次の4つの行為とされています。分野が違っても、中心になる仕事は共通しています。
- 心理に関する支援を要する者の心理状態を観察し、その結果を分析すること
- 心理に関する支援を要する者に対し、その心理に関する相談に応じ、助言、指導その他の援助を行うこと
- 心理に関する支援を要する者の関係者に対し、その相談に応じ、助言、指導その他の援助を行うこと
- 心の健康に関する知識の普及を図るための教育及び情報の提供を行うこと
保健医療分野の就職先と仕事
職場の例は、精神科の病院やクリニック、総合病院、保健所、精神保健福祉センターなどです。面接や心理検査によるアセスメントに加えて、医師や看護師、精神保健福祉士などとチームで関わる点が特徴です。
令和5年度の調査では、保健医療分野の公認心理師の連携職種として「医療機関勤務の医師」が89.3%、「看護職」が71.8%でした。多職種の中で心理の専門性を求められる職場だといえます。雇用面では、病院では常勤が多く、診療所や保健所・保健センターでは非常勤が多いと報告されています。
福祉分野の就職先と仕事
児童相談所、児童養護施設などの児童福祉施設、障害児通所支援事業所、障害者支援施設、高齢者施設、市区町村の子育て支援部署などがあります。
同じ福祉分野でも雇用の形は分かれます。報告書では、児童相談所や児童養護施設などの入所型施設では常勤の心理職として雇われることが多い一方、市区町村の子育て支援部署や保育所では非常勤の心理職が多いとされています。また、障害福祉・高齢者福祉の分野では、心理職以外の職員として雇用されている人が多いとも報告されています。
教育分野の就職先と仕事
スクールカウンセラー、教育委員会や教育センターの教育相談、大学の学生相談室、特別支援教育に関わる機関などです。
令和5年度の調査では、教育分野で心理的支援業務を担う公認心理師の80.0%が、教職員へのコンサルテーション(専門的な立場からの助言)を行っていました。子ども本人への面接だけでなく、学校という組織の中で周囲を支える役割が大きい分野です。
司法・犯罪分野の就職先と仕事
家庭裁判所、少年鑑別所、少年院、刑事施設(刑務所など)、保護観察所、警察関係の相談機関などです。国や自治体の機関が中心で、たとえば法務省の少年鑑別所や刑事施設で心理の仕事に就く矯正心理専門職は、人事院が実施する国家公務員採用試験(法務省専門職員(人間科学))を経て採用されます。機関ごとに採用の方法や試験区分は異なるため、募集要項で確認してください。
この分野で働く公認心理師は少数で、令和5年度の調査では主たる勤務先が司法・犯罪分野の人は3.9%でした。一方で、勤務する人の7割以上が常勤で、雇用が比較的安定している点が特徴として挙げられています。
産業・労働分野の就職先と仕事
企業の健康管理室や人事部門、EAP(従業員支援プログラム)を提供する機関、産業保健関連の機関、就労支援に関わる機関などです。
令和5年度の調査では、主たる勤務先が産業・労働分野の公認心理師(2,145人)のうち、心理に関する職種として雇用されている人は64.4%で、35.6%は心理職以外の職種として雇われ、業務の一部で心理的支援を担当していました。心理職以外の職種で働きながら、心理的支援を担う形も少なくない分野だといえます。
その他の分野(私設相談機関・大学など)
民間の心理相談機関、開業カウンセリングルーム、大学・研究所での教育研究、NPOなどです。令和5年度の調査では、現在の勤務先として「その他(私設心理相談機関、大学・研究所など)」に当てはまる人が13.7%いました。
公認心理師はどこで働いている?割合と雇用形態
どの分野に何割の人がいるかを知ると、求人の出やすさや競争の目安をつかめます。ここでは、公認心理師試験研修センターが実施した公式調査の数字を使います。
令和5年度の調査でわかる分野別の割合
この調査は、令和5年(2023年)10月末時点の公認心理師登録者71,732人を対象に行われ、38,827人が回答しました(回収率54.4%)。回答は任意のため、登録者全体を完全に代表するとは限らない点には注意してください。
主たる勤務先の分野の割合(回答者全体に対する割合)は次のとおりです。この五つに入らない残りは、「その他」の勤務先や、就労していない人などです。
- 教育分野: 27.1%
- 福祉分野: 24.7%
- 保健医療分野: 24.1%
- 産業・労働分野: 5.6%
- 司法・犯罪分野: 3.9%
勤務先の機関別では、多い順に「精神科を主とする病院」7.6%、「公立中学校・高等学校」7.1%、「身体科を主とする病院」6.3%でした。なお、複数の勤務先を持つ人を含む「現在の勤務先」で見ると、教育分野34.2%、保健医療分野30.7%、福祉分野29.5%の順になり、主たる勤務先とは割合が変わります。どの数字を使うかで見え方が違うため、報告書の定義を確認してください。
常勤と非常勤の割合
心理的支援業務に従事している公認心理師の雇用状況は、同じ調査で次のとおりです。
- 常勤・心理職: 32.6%
- 非常勤・心理職: 35.6%
- 常勤・心理職以外: 26.3%
- 非常勤・心理職以外: 5.5%
非常勤の心理職が最も多く、常勤の心理職は3割強です。つまり、公認心理師の資格を取っても、希望の分野で常勤の心理職としてすぐ働けるとは限りません。複数の職場を掛け持ちして生活を組み立てている人が多いことを、前提として知っておくと進路を考えやすくなります。
心理職として雇われる割合は分野で違う
「心理に関する職種」として雇用されている割合は、心理的支援業務に従事している職場がある回答者のうち、次のとおりです。
- 保健医療分野: 72.1%
- 福祉分野: 65.2%
- 教育分野: 69.7%
- 司法・犯罪分野: 84.5%
- 産業・労働分野: 64.4%
心理職以外の職種として雇われている人の割合は、司法・犯罪分野では約15%ですが、ほかの分野では3割前後に上ります。こうした人たちは、心理職以外の立場で心理的な支援を担っています。求人を見るときは、「公認心理師歓迎」と書かれていても、職種名が心理職なのか、相談員・支援員・指導員などの名称なのかを確認しておくと、入職後の業務のイメージのずれを減らせます。
公認心理師と臨床心理士の就職先の違い
結論からいうと、両者の就職先は大きく重なっています。臨床心理士は日本臨床心理士資格認定協会が認定する民間資格、公認心理師は公認心理師法にもとづく国家資格です。日本臨床心理士会は、臨床心理士の活動領域として、医療・保健、教育、福祉、司法・法務・警察、産業・労働、私設心理相談、大学・研究所を挙げており、公認心理師の5分野と「その他」の枠組みとほぼ対応しています。なお、臨床心理士の分野別の人数を示す最新の公的な統計は確認できなかったため、割合の比較はしていません。
違いが出やすいのは、求人票の応募条件です。「公認心理師」だけを条件にする求人、「臨床心理士」だけを条件にする求人、どちらかでよい求人が混在しています。応募を考える職場ごとに、求人票や募集要項で確認してください。
資格そのものの違いについては、別の記事で詳しく解説します。就職先を考える段階では、「両方持っていると応募できる求人の幅が広がる可能性がある」という程度に捉え、志望分野の求人でどちらが求められているかを先に調べるのが現実的です。
公認心理師の就職先ごとの年収の傾向
年収は就職先選びで気になる点ですが、この記事では分野ごとの傾向を雇用形態との関係でだけ触れます。具体的な金額は、出典と調査年度を確認できるものを年収の記事でまとめます。
- 常勤で働く人が多いのは、司法・犯罪分野(7割以上が常勤)や、病院、児童相談所・児童養護施設などの入所型施設です。常勤は、月給・賞与・社会保険が安定しやすいとされます
- 非常勤が多い職場(診療所、保健所・保健センター、市区町村の子育て支援部署や保育所など)では、勤務日数によって収入が変わります
- 産業・労働分野は、心理職以外の職種として雇われる人が3割台いて、その場合の給与は所属する会社の職種ごとの規定に左右されることがあります
つまり、同じ公認心理師でも、分野より「常勤か非常勤か」「心理職か他職種か」で収入の幅が変わります。年収を重視する場合は、複数の職場を組み合わせた働き方も含めて考えるとよいでしょう。
公認心理師の新卒の探し方
新卒で公認心理師として働く場合、まず「いつ受験資格を得られるか」を整理しておく必要があります。公認心理師試験の受験資格は、公認心理師法第7条で、大学と大学院で所定の科目を修めて修了するルート、大学で所定の科目を修めたうえで2年以上の実務経験を積むルートなどが定められています。自分がどのルートに当たるかは、公認心理師試験研修センターのページで確認できます。
受験資格の見込みと就職活動の時期
試験の申込時点で受験資格が「見込」の人も受験できます。たとえば第10回試験(2027年3月7日実施)では、受験申込期間が2026年12月1日から12月25日で、見込の人は2027年4月16日消印有効までに必要書類を提出すると決められています。大学院2年生の秋から冬は、就職活動、修士論文、試験勉強が重なるため、早めに計画を立てておくと安心です。
新卒の探し方の具体的な方法
求人の探し方には、おおまかに次のような方法があります。
- 大学院の指導教員、研究室、実習先からの紹介や情報。心理職の求人は、大学院や実習先を通じて案内されることがあります
- 大学のキャリアセンターや、大学院の求人掲示
- 自治体や国の公務員採用情報(児童相談所の心理職、家庭裁判所、矯正施設など)。試験区分や受験資格は自治体や機関で異なるため、募集要項で確認します
- ハローワークや、医療・福祉・教育分野の求人情報
- 公認心理師や臨床心理士の職能団体、学会が発信する求人・研修の情報
求人の探し方に唯一の正解はなく、分野や地域によって有効な方法が違います。実習やアルバイトで関わった機関で、そのまま働く道が開けることもあります。
試験に合格した後は登録が必要
就職先の応募条件に「公認心理師」とある場合は、試験の合格だけでなく登録まで済んでいるかが問われます。公認心理師法第5条は、試験に合格した者は公認心理師となる資格を有すると定めています。第28条は、その資格を有する者が公認心理師となるには、公認心理師登録簿への登録を受けなければならないと定め、第44条は、公認心理師でない者が「公認心理師」という名称を使うことを禁じています。第10回試験の合格発表は2027年3月31日の予定なので、4月以降の入職を考える場合は、登録の手続きの時期も確認しておくと安心です。手続きの詳細は公認心理師試験研修センターの案内で確認してください。
新卒で気をつけたいポイント
求人を比べるときは、次の点を確認すると入職後のずれを減らせます。
- 職種名が心理職か、相談員・支援員などか
- 常勤か非常勤か、契約期間と更新の有無
- 公認心理師の資格が応募条件か、取得見込みでもよいか(登録後でなければ名乗れない点も含めて)
- スーパービジョンや事例検討、研修の機会があるか
- 心理検査や面接など、担当する業務の範囲
新卒で常勤の心理職に就けるとは限らないため、非常勤を組み合わせながら経験を積み、常勤職を目指す道も現実的な選択肢です。進路に迷う場合は、大学院の指導教員や、現場で働く先輩に相談してみてください。
よくある質問
Q. 公認心理師の就職先はどこが多いですか?
令和5年度の公認心理師活動状況等調査(公認心理師試験研修センター)では、主たる勤務先は教育分野27.1%、福祉分野24.7%、保健医療分野24.1%の順でした。産業・労働分野は5.6%、司法・犯罪分野は3.9%です。
Q. 公認心理師の就職先に病院はありますか?
あります。精神科を主とする病院が主たる勤務先の7.6%、身体科を主とする病院が6.3%で、勤務先の機関別では上位に入っています。病院は常勤の心理職として働ける職場が比較的多いと報告されています。
Q. 公認心理師の就職先で人気の分野はありますか?
人気を示す公的な数字は確認できませんでした。分野の人数としては、教育・福祉・保健医療が多くを占めます。ただし、人数が多いことと、希望者が多くて競争が激しいことは別なので、志望先の求人状況は個別に調べてください。
Q. 公認心理師と臨床心理士で就職先は違いますか?
大きく重なります。どちらも病院、学校、福祉施設、企業などで働けます。違いが出るのは求人票の応募条件で、どちらか一方を条件にする求人もあれば、どちらでもよい求人もあります。
Q. 公認心理師の資格を取る前に就職できますか?
できます。ただし、資格が条件の求人には応募できない場合があります。試験の申込時点で受験資格が「見込」の人も受験でき、期限までに必要書類を提出する決まりです。
Q. 公認心理師は常勤で働けますか?
可能ですが、割合としては多くありません。令和5年度の調査では、心理職として常勤で働く人は32.6%で、非常勤の心理職が35.6%と最も多い結果でした。職場や分野によって差が大きいため、求人票で雇用形態を確認してください。
まとめ
公認心理師の就職先を考えるときの要点は次の3つです。
- 就職先は保健医療・福祉・教育・司法犯罪・産業労働の5分野とその他に広がり、令和5年度の調査では教育・福祉・保健医療がそれぞれ2割台を占めます
- 同じ分野でも、常勤か非常勤か、心理職か他職種かで働き方や収入が大きく変わるため、分野名より雇用の形を確認することが大切です
- 新卒は、指導教員や実習先、公務員採用、求人情報などを組み合わせて探し、資格の取得時期と就職活動を並行して計画しましょう
公認心理師の就職先は、資格を取った後の働き方に直結します。公的な調査の数字を手がかりに、自分が働きたい分野と雇用の形を具体的にイメージしてみてください。数字や制度は更新されるため、最新の情報は公認心理師試験研修センターの活動状況等調査のページや、厚生労働省の公認心理師制度のページで確認してください。



