心理療法・技法
動機づけ面接
よみ:どうきづけめんせつ別名・英語表記:MI、Motivational Interviewing、動機づけ面接法
動機づけ面接とは、変わりたい気持ちと変わりたくない気持ちの間で揺れる両価性を受けとめながら、本人自身の変わる理由を引き出し、行動変化への動機と決意を強める協働的な面接の方法です。
動機づけ面接(Motivational Interviewing、MI)とは、行動を変えることへの動機と決意を強めるための、対人援助の面接の方法です。クライエントの話に耳を傾け受けとめる姿勢(来談者中心の関わり)を土台にしながら、面接者が行動変化という方向を意識して、本人自身の「変わりたい理由」を引き出していく点に特徴があります。もともとはアルコールや薬物の問題への援助のために開発され、現在は医療、保健指導、福祉、司法など幅広い領域で使われています。
心理職にとっては、「変わったほうがいいのに動かない」相手を、説得や指示で動かそうとしないための考え方として押さえておきたい用語です。
動機づけ面接の考え方
動機づけ面接の出発点は、変化の前に「両価性」があるという理解です。人は、変わりたい気持ちと今のままでいたい気持ちを、同時にもっていることが少なくありません。援助者が変化の利点を熱心に説くと、かえって本人が現状を守る側の言い分を口にするようになり、変わらない理由を自分で強めてしまうことがあります。
そこで動機づけ面接では、援助者が答えを教えるのではなく、本人の中にすでにある価値観や前向きな考えを引き出し、本人の言葉で変わる理由を語ってもらうことを重視します。
自治体の研修資料では、動機づけ面接を行う面接者は、次のような姿勢(MIのスピリット)をもつ必要があると説明されています。
- 協働: 一方的に解決策を指示せず、本人と協力して進めます
- 受容: 訂正したい衝動に駆られても、本人の考えや意見に耳を傾けます
- 思いやり: 援助者の都合ではなく、本人の回復や幸福を第一に考えます
- 喚起: 本人がもともともつ前向きな考えや価値観を引き出します
この4つは、面接の技術というより姿勢の柱です。技術だけを真似しても、説得の道具になりやすい点が、この方法で繰り返し注意されるところです。
進め方の流れとスキル
動機づけ面接では、面接の進行を「関わる」「焦点を定める」「引き出す」「計画する」という4つの流れで整理する見方が広く紹介されており、2023年に出た原典の第4版でも、この4つを軸に構成されています。ただし、決まった順に進めるというより、状況によって行き来するものとして捉えられています。細かな定義は版によって整理のしかたが変わるため、書籍など原典で確かめてください。
基本の会話スキルは、頭文字をとって OARS と呼ばれます。
- 開かれた質問(Open questions): 「はい・いいえ」で終わらない質問で、本人の考えや事情を語ってもらいます
- 是認(Affirming): 本人の強みや努力、よい意図を認めて伝えます
- 聞き返し(Reflecting): 相手の言葉の意味や気持ちを、確認する形で返します
- 要約(Summarizing): 話の要点をまとめて返し、本人が自分の言葉を聞き直せるようにします
聞き返しは、単なるオウム返しではなく、相手の言葉の奥にある気持ちや迷いを推測して返すことで、面接を深めるスキルとされています。傾聴の基本はカウンセリング技法の記事とも重なります。
もう一つ、動機づけ面接で重視される考え方に「チェンジトーク」があります。変わることについての、本人自身の発言をさします。変わりたい理由、変われそうだという自信、変わる準備の言葉などを聞き逃さず、聞き返したり是認したりして、その方向の語りが増えるように関わります。反対に、現状を続けたい側の発言(維持トーク)が出たときは、反論せずに受けとめ、否定せず別の角度から会話を続けます。
向いている状態と使われる場面
もともとはアルコールや薬物関連の問題の援助で培われ、現在は次のような場面で用いられています。
- 飲酒、喫煙、薬物など、物質使用にかかわる行動の見直し
- 生活習慣病の予防や改善に向けた保健指導
- 治療や支援へのためらいがある人との関係づくり
- 精神疾患の治療への導入、通院や服薬への迷い
うつ病や不安症など、ほかの精神疾患の治療への動機づけで併用されることもあります。治療法として単独で用いられる場合と、認知行動療法などの導入や並行して用いられる場合とがあります。効果や適応の範囲は、対象や研究によって異なるため、原典や診療ガイドラインを確かめて説明してください。
実施するときの注意点
動機づけ面接は「誘導の技術」と誤解されやすい面があります。心理職として、次の点を押さえておきます。
- 正す反射を意識する: 間違った行動を見ると、すぐ正したくなる気持ちが生じます。その気持ちに気づき、ひとまず保留して、本人の考えを先に聞きます
- 本人の自律を守る: 変わるか変わらないかを決めるのは本人です。援助者の期待する方向に誘導しすぎると、関係が損なわれます
- 情報提供は許可を得て: 助言や知識の提供が必要なときは、先に本人に尋ね、了承を得てから伝えます
- 安全の確保が先: 自傷行為や希死念慮など、命や安全にかかわる事柄は、動機を引き出す前にリスクの評価と対応が必要です。所属先の手順に沿って、主治医や関係機関と連携します
- 学び方: 入門ワークショップは2〜3日間で開かれることが多いと紹介されています。面接の録音を使ったフィードバックやスーパービジョンで、練習を重ねることが勧められます
面接の初期、インテークの場面で動機づけの考え方を活かすことも多くあります。インテーク面接の記事も参照してください。
関連する用語
- 両価性: 変わりたい気持ちと変わりたくない気持ちが同時にあること。動機づけ面接の核になる考え方です
- チェンジトーク/維持トーク: 変化に向かう発言と、現状維持に向かう発言のことです
- OARS: 開かれた質問、是認、聞き返し、要約の頭文字で、基本のスキルをさします
- 来談者中心療法: 動機づけ面接の土台にある、受容と共感を重視する関わり方です。来談者中心療法の項目を参照してください
参考文献・出典
- 川崎市「平成29年度川崎市ネットワーク会議人材育成研修『動機づけ面接』研修会 要旨」 川崎市のPDF
- 北田雅子・磯村毅『医療スタッフのための動機づけ面接法 逆引きMI学習帳』医歯薬出版、2016年
- ウイリアム・R・ミラー、ステファン・ロルニック(著)、原井宏明(監訳)『動機づけ面接』上・下、星和書店、2019年(原著第3版の翻訳)
- Miller, W. R., & Rollnick, S. *Motivational Interviewing: Helping People Change and Grow* (4th ed.). Guilford Press, 2023
