心理療法・技法

マインドフルネス

よみ:まいんどふるねす別名・英語表記:mindfulness、マインドフルネス瞑想、MBSR、MBCT

マインドフルネスとは、今この瞬間の体験に、評価や判断を加えずに意図的に注意を向けることです。MBSR や MBCT など、心理支援のプログラムや技法の土台として使われています。

マインドフルネスとは、今この瞬間の体験(呼吸、体の感覚、思考、感情など)に、よい悪いの評価や判断を加えずに、意図的に注意を向ける心のあり方、およびそれを育てる練習のことです。もともと仏教の瞑想に由来する実践を、宗教的な文脈から切り離して医療や心理支援に取り入れたもので、単独の療法というより、複数のプログラムや技法に共通する「構え」として扱われます。

心理職が出会う場面は大きく3つあります。ひとつはマインドフルネスストレス低減法(MBSR)やマインドフルネス認知療法(MBCT)のような構造化されたプログラム、もうひとつは弁証法的行動療法(DBT)のように技法の一部として組み込まれる使い方、最後は面接のなかで数分の呼吸への気づきを紹介する使い方です。どの形でも、「落ち着くための技術」ではなく「体験との関係を変える練習」だという点を押さえておくと、相談者への説明がぶれません。

マインドフルネスの考え方

よく引かれるのは、MBSR を開発した J. カバット・ジンによる「意図的に、いまこの瞬間に、評価をせずに注意を向けること」という説明です。研究の分野では、これを「意図」「注意」「態度」の3つの要素に分けて整理するモデル(Shapiro ら, 2006)も知られています。定義は研究者や団体によって少しずつ異なるため、相談者や他職種に説明するときは、どの説明に拠っているかを意識しておくと混乱を防げます。

大事なのは、思考や感情を消すことが目的ではないという点です。雑念が浮かぶのは自然なことで、浮かんだことに気づいて、注意を静かに元へ戻す。その繰り返しが練習そのものになります。「うまくリラックスできなかった」と感じた相談者には、リラックスは目的ではなく副産物であることを伝えると、練習が続きやすくなります。

認知行動療法(CBT)の流れでは、考えの内容を検討するのではなく、「考えは考えとして眺める」という距離の取り方を重視する点が、従来型の認知再構成との違いとして語られます。反すう(同じ考えを繰り返し回す状態)が続く人には、特に意味のある視点です。

代表的なプログラムと技法

  • MBSR(マインドフルネスストレス低減法): J. カバット・ジンが医療現場向けに開発した、集団で行う8週間程度のプログラム。呼吸、ボディスキャン、ヨガ的な動きなどの練習と、日常での実践を組み合わせます。
  • MBCT(マインドフルネス認知療法): MBSR に認知療法の要素を組み合わせ、うつ病の再発予防を目的に作られたプログラム。うつ病が落ち着いている時期の人を対象に、8週間程度の集団形式で行うのが基本とされます。
  • DBT や ACT などへの組み込み: 感情の調整や苦痛への耐性を高める技法のひとつとして使われます。
  • 短い実践: 面接の冒頭や終わりに、数分間、呼吸や足の裏の感覚に気づく練習を行う使い方です。

プログラムの細かい内容や回数は、開発者の教本や研修で確認してください。ここでは名前と位置づけだけを押さえます。

向いている状態とエビデンス

うつ病の再発予防、不安、ストレス関連の症状などで研究が重ねられています。国立精神・神経医療研究センターの認知行動療法センターも、セルフヘルプのページでマインドフルネスを、いまの体験に気づいてありのままに受け入れる方法として紹介し、練習用の動画も公開しています。相談者にセルフケアとして紹介するときは、こうした公的機関の資料を案内すると安心です。

一方で、効果の大きさは対象や方法によって幅があり、すべての人に向くわけではありません。また、診療ガイドラインでの推奨度は疾患ごとに異なります。根拠を説明するときは「どの対象に、どのプログラムで、どの程度の研究があるか」を最新のガイドラインや総説で確かめ、断定は避けます。

実施するときの注意点

静かに自分の内側へ注意を向ける練習は、人によっては負担になることがあります。心理職として次の点を確かめておきます。

  • トラウマ体験のある人: 体の感覚に注意を向けることで、フラッシュバックや強い不快感が出ることがあります。トラウマインフォームドケアの視点で、目を閉じなくてよい、途中でやめてよい、外の刺激に注意を向けてよい、といった選択肢を必ず伝えます。
  • 解離や強い不安がある人: 長い瞑想で現実感が薄れる体験が出ることがあります。短い時間、目を開けたまま、足の裏など確かな感覚から始めます。
  • 急性期の症状がある人: 精神病症状が活発な時期や、重い抑うつ・希死念慮が強い時期には、導入の時期や方法を主治医と相談します。
  • 「やらなければ」にならないように: 宿題が負担になり自責につながる場合は、頻度や時間を下げます。
  • 宗教との関係: 由来が仏教の瞑想にあるため、信条の面で抵抗がある人もいます。心理支援としての位置づけを説明し、同意を得て進めます。

また、自分で体験したことのない練習を相談者に勧めるのは難しいものです。実施する側が一定の練習を積み、研修や指導を受けておくことが、MBSR や MBCT の指導者養成でも重視されています。自分の力量を超えるときは、無理にプログラムとして行わず、短い気づきの練習にとどめるのが安全です。

関連する用語

  • 認知行動療法、弁証法的行動療法、トラウマインフォームドケアは本文のリンクを参照
  • 心理教育

参考文献・出典

  • 国立精神・神経医療研究センター 認知行動療法センター「セルフヘルプ」 https://cbtmap.ncnp.go.jp/self-help/
  • J. カバットジン(著)、春木豊(訳)『マインドフルネスストレス低減法』北大路書房、2007年
  • Z. V. シーガル、J. M. G. ウィリアムズ、J. D. ティーズデール(著)、越川房子(監訳)『マインドフルネス認知療法:うつを予防する新しいアプローチ』北大路書房、2007年
  • Shapiro, S. L., Carlson, L. E., Astin, J. A., & Freedman, B. (2006). Mechanisms of mindfulness. Journal of Clinical Psychology, 62(3), 373-386.

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