症状

抑うつ気分

よみ:よくうつきぶん別名・英語表記:抑うつ、気分の落ち込み、depressed mood

抑うつ気分とは、気持ちが沈む、悲しい、空しいといった落ち込んだ気分が続く状態を指す症状で、うつ病の中核となる症状のひとつです。

抑うつ気分とは、気持ちが沈む、悲しい、空しい、何も楽しくないといった落ち込んだ気分が続く状態を指す症状です。うつ病(大うつ病性障害)の中核となる症状のひとつで、もうひとつの中核である興味・喜びの喪失とともに、診断の入口として確認されます。

日常語の「落ち込み」や「うつ」と同じではありません。誰にでも起こる一時的な気分の変化と、病的な抑うつ気分の違いは、持続、強さ、生活への影響、他の症状の組み合わせで見ます。心理職は、診断を決める立場ではありませんが、気分の状態を丁寧に聞き取り、医師につなぐ判断と日々の支援に活かします。

抑うつ気分とは(どんな体験か)

国立精神・神経医療研究センターの「こころの情報サイト」では、うつ病の主な症状として、一日中気分が落ち込む、何をしても楽しめないといった状態が続くこと、物事の捉え方が否定的になること、イライラや焦りが出ることもあること、重症になると死にたいほどつらい気持ちが現れることがあることが挙げられています。

体験の語られ方は人によって違います。

  • 「悲しい」と言わず、「何も感じない」「空っぽ」と表現する
  • 涙もろくなる、または涙も出ない
  • 悲しさよりも、イライラや焦りとして現れる
  • 体のだるさ、重さ、頭痛などの身体の訴えが前面に出る
  • 朝がとくにつらいなど、一日の中で強さが変わる

「気分が落ち込む」と自分で言えない人もいます。聞き手が、表情、話すスピード、声の大きさ、身だしなみの変化などからも状態を見て取ることが大切です。

見られる疾患・状態

抑うつ気分が見られるのは、うつ病だけではありません。

  • うつ病(大うつ病性障害)
  • 双極症(双極性障害)のうつ状態
  • 適応障害(適応反応症)で、ストレス要因に反応して生じる抑うつ気分
  • 持続性抑うつ症(気分変調症)のような、軽くても長く続く抑うつ
  • 不安症、PTSD、統合失調症、摂食症などに伴う二次的な抑うつ
  • 身体疾患(甲状腺の病気など)や、薬の影響によるもの
  • 死別などの喪失に対する悲嘆

とくに区別が必要なのは、双極症のうつ状態と、うつ病です。こころの情報サイトでも、双極性障害はうつ状態と躁(軽躁)状態を繰り返し、うつ病はうつ状態のみで、治療法が異なるため、専門家の判断が必要と説明されています。過去に気分が異常に高揚した時期がなかったかを、本人だけでなく家族の情報も含めて確かめることが、心理職の見立てにも役立ちます。

アセスメントで確かめること

面接では、気分の落ち込みそのものに加えて、次の点を確かめます。診断基準の項目をそのまま読み上げる必要はなく、本人の言葉で聞いていきます。

  • いつから、どのくらい続いているか(数週間単位か、年単位か)
  • 落ち込みに「きっかけ」があるか、きっかけがなくても続くか
  • 興味や喜びの喪失(好きだったことが楽しめない)
  • 睡眠、食欲、体重、疲れやすさ、集中力、決断力の変化
  • 自分を責める気持ち、無価値感、強い罪責感
  • 動作や考えのゆっくりさ、または落ち着きのなさ
  • 死にたい気持ち、希死念慮の有無と具体性(計画、手段、以前の行動)
  • 躁・軽躁のエピソード、物質使用、身体疾患、服薬の状況
  • 仕事・学業・家事・対人関係への影響
  • 家族歴、支えてくれる人の有無

抑うつ気分の程度を測る質問紙がありますが、点数は診断ではなく、変化を追うための目安として使います。使うときは目的と限界を本人に伝えます。心理検査の種類と特徴も参考にしてください。

面接での対応のポイント

抑うつ気分がある人への関わりは、安全の確認が最優先です。希死念慮について尋ねることが自殺の危険を高めるわけではないとされており、気になるときは具体的に尋ねる姿勢が大切です。対応が必要な場合は、所属先の手順に沿って、主治医や関係機関と連携します。

  • 十分な休養の大切さを伝える。こころの情報サイトでも、休養が重要で、職場や学校を離れることで症状が軽くなる場合があると説明されている。休むかどうかの判断は主治医と相談する
  • 励ましや「頑張って」は、本人の負担になりうる。まず、つらさをそのまま受け止める
  • 大きな決断(退職、離婚、退学など)は、症状が重い時期は先送りできないか、本人と一緒に検討する
  • 薬の相談には踏み込まず、「主治医に伝えてみましょう」と受診につなぐ。薬の自己中断をしないよう、主治医の方針を確かめる
  • 状態が重い時期は、面接の目標を小さくする(睡眠、食事、1日のリズム、散歩など)
  • 回復期には、認知行動療法などの心理療法で、考え方や行動のパターンを整える
  • 家族や職場に必要な情報を伝える際は、本人の同意を得る。守秘義務や例外の扱いは所属先の規程と関係法令を確認する

心理教育として、「抑うつ気分は意志の弱さではなく、治療や支援が必要な状態であること」を、本人と家族に伝えます。伝え方は心理教育の項目も参照してください。

関連する用語

  • 希死念慮: 抑うつ気分に伴って現れることがある。見落とさないことが重要

参考文献・出典

  • 国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所「こころの情報サイト うつ病」 https://kokoro.ncnp.go.jp/disease.php?@uid=9D2BdBaF8nGgVLbL
  • 厚生労働省「みんなのメンタルヘルス総合サイト」(令和5年4月から掲載内容を上記こころの情報サイトに移行)
  • American Psychiatric Association(日本精神神経学会 日本語版用語監修、髙橋三郎・大野裕 監訳)『DSM-5-TR 精神疾患の診断・統計マニュアル』医学書院、2023年
  • 日本うつ病学会「うつ病診療ガイドライン2025」(2025年12月公表)、「日本うつ病学会診療ガイドライン 双極性障害(双極症)2023」

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