公認心理師の将来性は?需要・配置の動きと厳しい現実

公認心理師の将来性は?需要・配置の動きと厳しい現実

公認心理師の将来性を、登録者数76,547名や2026年度診療報酬改定、ストレスチェックの拡大など公的な資料で整理。食えない・やめとけと言われる理由や、常勤が少ない厳しさも解説します。

公認心理師の将来性は、「活躍の場は制度の面から広がりつつあるが、常勤の席はまだ十分ではない」というのが、公的な資料から言える現状です。2026年度の診療報酬改定で公認心理師の位置づけが広がった一方、日本学術会議の報告(2026年8月28日)は、非常勤が4割を占めて職業として不安定であることも指摘しています。

この記事は、心理系の大学院生や資格取得前後の方、これから公認心理師を目指す方に向けて、「食えない」「やめとけ」という声と「需要がある」という声の両方を、公的な根拠で整理したものです。不安をあおることも、楽観を押しつけることもせず、判断の材料を並べます。

この記事でわかること

  • 公認心理師の登録者数と、どの分野で働いているか(日本学術会議の報告、令和5年度調査)
  • 配置が進む分野とその根拠(診療報酬、スクールカウンセラー、ストレスチェック)
  • 「食えない」「やめとけ」と言われる理由と、公的資料から見える厳しさ
  • 臨床心理士の将来性の見方と、将来を見据えて今できること

公認心理師の将来性を考える前に:現状の数字

将来を考えるには、まず現在の規模と働き方を知っておく必要があります。ここでは、国や学術団体の公表資料にある数字だけを使います。

登録者数は76,547名(2026年6月末)

日本学術会議の報告「公認心理師の国家的活用の在り方」(2026年8月28日)によると、公認心理師の登録者は2026年(令和8年)6月末日現在で76,547名です。公認心理師法が施行された2017年から約9年で、7万人を超える規模になりました。

国家試験の受験者はここ数年、毎回2,000人台で推移しています。公認心理師試験研修センターの発表では、第9回(2026年3月1日実施)は受験者2,400人、合格者1,441人、合格率60.0%でした。登録者の増え方は今後も続くと考えられますが、増加ペースの見通しを示した公的な資料は確認できませんでした。

どの分野で働いているか

登録者全員(71,732名、2023年10月末時点)を対象とした令和5年度公認心理師活動状況等調査(38,827名が回答)では、現在の主たる勤務先は次のとおりでした。

  • 保健医療分野:24.1%
  • 福祉分野:24.7%
  • 教育分野:27.1%
  • 司法・犯罪分野:3.9%
  • 産業・労働分野:5.6%
  • その他の機関:8.3%

教育分野が最も多く、保健医療と福祉がほぼ並びます。司法・犯罪や産業・労働は人数が少ない分野です。日本学術会議の報告は、この調査の特徴として、女性が全体の約7割を占めること、非常勤が4割を占めること、複数の勤務先を持つ人が多いことを挙げています。

つまり、公認心理師は「どこか一か所に常勤で就職する」働き方だけでなく、複数の職場を組み合わせて働く人が多い資格だと言えます。分野ごとの就職先は、公認心理師の就職先は?5分野の特徴と新卒の探し方で比べられます。

公認心理師の需要は?配置が進む分野と根拠

「需要がある」と言われる理由を、一次情報で確認できた範囲で整理します。ここでは、制度や予算の動きとして確認できたものに絞ります。

医療:診療報酬で公認心理師の位置づけが広がった

診療報酬とは、医療機関が行った医療行為に対して、保険から支払われる報酬のことです。どの職種が行った行為に点数がつくかが、医療機関が心理職を雇うかどうかに直結します。

日本学術会議の報告によると、保健医療分野での公認心理師の評価は、次のように少しずつ広がってきました。

  • 2018年度の改定で、診療報酬上の「臨床心理技術者」の文言が「公認心理師」に置き換えられた
  • 2024年度の改定で、精神科専門療法に「通院・在宅精神療法心理支援加算」が新設され、心的外傷後ストレス障害(PTSD)に対する対面の心理支援が算定できるようになった
  • 2026年度の改定で、「認知療法・認知行動療法」の実施者に公認心理師が追加され、330点の評価が新設された。あわせて心理支援加算も拡充され、神経症性障害、ストレス関連障害、身体表現性障害に対する心理支援も算定できるようになった
  • 臨床心理技術者などを公認心理師とみなす経過措置(いわゆる「みなし公認心理師」)は、2028年5月31日をもって廃止されることが明示されている

2026年度改定の内容は、厚生労働省の改定資料(「令和8年度診療報酬改定 重点的な対応が求められる分野(精神医療)」)でも確かめられます。同資料では、「認知療法・認知行動療法」に「公認心理師による心理支援を伴う場合」330点が設けられ、心理支援加算は250点から280点(月2回まで)に引き上げられたうえで、対象が神経症性障害、ストレス関連障害及び身体表現性障害の患者に広がっています。みなし公認心理師の経過措置の終了(2028年5月31日)も、同資料に明記されています。

日本学術会議の報告は、これらの変化を、さまざまな精神疾患への対面の心理支援を公認心理師が担うことを保険制度が認めたものと位置づけ、公認心理師の配置の拡大や安定した雇用の強化につながることが期待できるとしています。

ただし、これは「期待できる」という見方であり、実際に常勤の求人が増えるかどうかは、各医療機関の判断によります。厳しい面は、後の章で触れます。

公認心理師の診療報酬は今後どうなるか

診療報酬はおおむね2年ごとに見直されるため、次の改定で公認心理師の評価がどうなるかは、現時点では分かりません。確実に決まっているのは、みなしの経過措置が2028年5月31日で終わることです。それ以降、医療機関で心理職が関わる診療報酬を算定するには、公認心理師の資格がより重要になると考えられます。医療分野を目指す人は、改定のたびに厚生労働省の資料を確認しておくと安心です。

教育:スクールカウンセラーと不登校対策

教育分野は、公認心理師の勤務先として最も多い分野です。文部科学省は、不登校対策として2023年に「COCOLOプラン」(誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策)を取りまとめ、スクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカーの配置充実を施策に含めています。

日本学術会議の報告は、教育分野で資格を持つ人として、非常勤で雇用されるスクールカウンセラーのほか、常勤の教員や教育行政職も含まれると推測しています。需要があることと、常勤で安定して働けることは別の話である点は押さえておく必要があります。

産業・労働:ストレスチェック制度の拡大

ストレスチェックとは、労働者のストレスの状況を調べる検査で、労働安全衛生法にもとづく制度です。日本学術会議の報告によると、2018年の労働安全衛生規則の改正で、公認心理師がストレスチェックの実施者として認められました。

厚生労働省のページによると、2025年5月に公布された改正労働安全衛生法により、労働者数50人未満の事業場にも、令和10年(2028年)4月1日からストレスチェックが義務化されます。対象となる事業場が増えることは、産業分野での心理職の活躍の場が広がる可能性を示しています。

一方で、日本学術会議の報告は、産業・労働分野の公認心理師の非常勤の割合が47.8%と高いこと、各会社の任せになっている部分が多く不安定な職域であることを指摘しています。

福祉・司法:職務の整理と採用の仕組みが課題

福祉分野は、児童福祉施設や障害者福祉の相談支援機関などで働く人が中心です。日本学術会議の報告は、福祉分野は職務内容がまだ流動的で、一層の明確化が必要だとしています。

司法・犯罪分野は、少年鑑別所、家庭裁判所、警察などの公務員として働く人が多い分野です。同報告によると、公的施設の職員は公務員試験で採用されるため、公認心理師の資格の有無は直接は関係しないのが現状で、採用人数も限られています。

公認心理師は食えない?やめとけと言われる理由

「食えない」「やめとけ」という検索が多いのは、不安に思う人が多いからです。ここでは、その声の根拠になりうる点を、公的な資料から整理します。

常勤の席が足りていない

日本学術会議の報告は、令和5年度調査の結果として、非常勤が4割を占め、複数の勤務先を持つ人が多いこと、常勤のポストが不足していることを挙げています。専門職として働きたくても、常勤の求人が限られ、非常勤を掛け持ちする働き方になりやすいことが、「食えない」という評価の背景にあります。

収入の具体的な数字は、出典のある公的な統計で確認するのが確実です。この記事では、雇用の形が収入の安定を左右しやすい、という点だけ押さえてください。

資格の認知度と制度改革の遅れ

同報告は、公認心理師は法施行後相応の期間を経たにもかかわらず、国民からの資格の認知度はいまだ高いとは言い難いとしています。また、公認心理師法附則第5条にもとづく施行状況の検討は行われたものの、その後の実効性を持った制度改革等はほとんど進んでいない、とも述べています。

学術団体が「進んでいない」と書いていること自体が、将来を楽観しすぎないほうがよい根拠の一つです。

診療報酬の条件は簡単ではない

診療報酬の改定は追い風ですが、日本学術会議の報告は、施設基準に「認知行動療法の実施経験のある公認心理師が常勤で勤務していること」などが含まれ、ハードルが高いと述べています。

厚生労働省の改定資料でも、公認心理師が行う認知行動療法的アプローチの心理支援(330点)を算定するには、医療機関に専任の常勤の公認心理師がいることや、その公認心理師が一定の勤務経験、過去の面接の実施経験(5症例60回以上)、研修の修了といった要件を満たすことが求められています。

つまり、診療報酬に公認心理師が加わっても、どの医療機関でもすぐに算定できるわけではありません。経験や研修の条件を満たした人が有利になる面もあります。実際に算定できるかは、その医療機関が施設基準を届け出ているかによるため、志望先で確認が必要です。

取得までの時間と費用の負担

公認心理師の受験資格は、大学で所定の科目を修めたうえで大学院に進む、または大学卒業後に実務経験を積むなど、複数のルートがあります。日本学術会議の報告は、養成を標準6年間として見る視点にも触れています。養成にかかる時間と学費は、将来性を考えるうえでの負担として見ておく必要があります。

試験の合格率も、公認心理師試験研修センターと厚生労働省の発表で、第7回(2024年3月実施)76.2%、第8回(2025年3月実施)66.9%、第9回(2026年3月実施)60.0%と下がってきました。公式資料には理由は示されておらず、今後の動きは分かりません。

「やめとけ」の声をどう受け止めるか

「やめとけ」という声には、収入、雇用の不安定さ、感情面の負担といった、実際に起こりうる課題が含まれます。一方で、その多くは個人の感想で、公的な統計に裏づけられたものとは限りません。

判断するときは、次の点を確認してみてください。

  • 自分が目指す分野(医療、教育、福祉、司法、産業)の雇用の形(常勤・非常勤の比率)
  • 公務員試験や自治体の採用など、資格以外の入口があるか
  • 非常勤を組み合わせる働き方を、自分は受け入れられるか
  • 養成にかかる期間と費用を、いつまでに、どう用意するか

臨床心理士の将来性は?公認心理師との関係

「臨床心理士 将来性」も一緒に調べられています。臨床心理士は、日本臨床心理士資格認定協会が認定する民間資格で、5年ごとの更新があります。

公認心理師が国家資格として制度に組み込まれるにつれ、診療報酬や法令の中で名前が出るのは公認心理師になりつつあります。たとえば、前述の診療報酬の改定でも、実施者として追加されたのは公認心理師です。ただし、臨床心理士の将来の位置づけや人数の推移を示した公的な資料は、本稿では確認できませんでした。

現場では、両方を持つ人も多くいます。日本学術会議の報告が引用する令和5年度調査では、回答した公認心理師のうち、臨床心理士の資格も持つ人が38.9%でした。

「心理職の将来性」という広い見方をすると、制度の中で評価が広がっているのは、国家資格である公認心理師を軸にした働き方です。臨床心理士だけを持つ場合は、志望先がどちらの資格を求めているかを、求人ごとに確かめる必要があります。公認心理師だけでなく臨床心理士も目指すかどうかは、志望する職場の応募条件、大学院の指定の有無、更新の負担を見て決めるのが現実的です。

公認心理師の未来と今後の展望

将来について、日本学術会議の報告が指摘している方向性を紹介します。これは学術会議としての提言であり、実現が決まったものではありません。

  • 公認心理師の周知と、活動の場のさらなる拡大に努める
  • 養成のコアカリキュラムを明確にし、国家試験の出題に反映する
  • 公認心理師を心理学領域の基礎資格と位置づけ、分野ごとの専門性を示す仕組み(専門公認心理師制度など)を検討する
  • 資格取得後の継続的な研修義務を制度化することを検討する

これらは提言の段階で、制度として決まったわけではありません。ただ、将来は「資格を取って終わり」ではなく、分野ごとの専門性や、継続的な学びが求められる方向にあることがうかがえます。研修の仕組みそのものは、公認心理師の更新と研修も参照してください。

公認心理師の仕事はAIで変わる?

AIが心理支援をどう変えるかについて、公認心理師の仕事への影響を整理した公的な資料は、本稿では確認できませんでした。「AIに置き換えられる」「人にしかできないから安泰」のどちらも、根拠を示して言える段階ではありません。確かなことが言えない部分は断定せず、所属先や職能団体の情報を通じて動向を追うのが安全です。

将来性を高めるために今できること

資格そのものよりも、どの分野で、どんな経験を積むかが、働き方に影響しやすい状況です。以下は、公的資料の内容から考えられる一般的な備えです。

  • 分野を絞って経験を積む: 診療報酬の改定は医療分野で、認知行動療法の実施経験が評価されます。どの分野で何を強みにするかを早めに考えておくと、実習先や就職先を選びやすくなります
  • 複数の働き方を想定する: 非常勤を組み合わせる人が多いため、一か所に依存しない働き方も選択肢に入れておきます
  • 採用の入口を知る: 公務員の心理職は試験で採用されます。資格だけでなく、受験案内の応募資格を確認します
  • 学び続ける仕組みを持つ: 公認心理師には、法律で資質向上の責務(第43条)が定められています。研修や学会への参加を、習慣にしておきます
  • 最新の公表資料を見る: 診療報酬や法令は改定されます。厚生労働省や日本公認心理師協会などの公表資料を、定期的に確認します

進路や就職は、所属する大学院や養成課程の教員、実習先の指導者にも相談しながら決めてください。

よくある質問

公認心理師の将来性について、よく検索される疑問に答えます。

Q. 公認心理師に将来性はありますか?

制度の面では、診療報酬の拡大やストレスチェックの対象拡大など、活躍の場が広がる動きが確認できます。一方で、非常勤が4割を占め、常勤のポストが不足していることも公的な報告に書かれています。将来性は、分野と働き方によって変わると考えるのが現実的です。

Q. 公認心理師は食えないって本当ですか?

「食えない」と一括りにできる公的な根拠は確認できません。ただし、非常勤が多く、複数の勤務先を持つ人が多いため、雇用の形によって収入の安定度は大きく変わります。具体的な年収の数字は、出典のある統計で確認してください。

Q. 公認心理師はやめとけと言われるのはなぜですか?

常勤の求人の少なさ、取得までの時間と費用、収入の見通しにくさ、感情面の負担などが理由に挙げられます。ただし、これらは進む分野や働き方で大きく異なります。ご自身が目指す分野の実情を確認してから判断してください。

Q. 公認心理師の需要は今後増えますか?

診療報酬の改定、スクールカウンセラーの配置充実を含む不登校対策、ストレスチェックの義務化の拡大など、需要を押し上げる可能性のある制度の動きはあります。ただし、需要が実際の常勤の求人の増加につながるかは、各機関の判断によります。

Q. 臨床心理士の将来性は公認心理師より低いですか?

臨床心理士の将来性を直接比べた公的な資料は、本稿では確認できませんでした。診療報酬など法制度の中で位置づけられているのは公認心理師です。一方で、令和5年度調査に回答した公認心理師のうち38.9%が臨床心理士の資格も持っています。志望する職場の応募条件を確認して判断してください。

まとめ:公認心理師の将来性は「分野と働き方」で見る

公認心理師の将来性について、この記事の要点を3つにまとめます。

  • 登録者は2026年6月末時点で76,547名。診療報酬の拡大(2026年度改定)、不登校対策、ストレスチェックの対象拡大など、活躍の場が広がる制度の動きがある
  • 一方で、非常勤が4割を占め、常勤のポストが不足していることを日本学術会議が指摘している。診療報酬の施設基準にも高いハードルがある
  • 「食えない」「やめとけ」という声は、分野と働き方によって当てはまる度合いが違う。目指す分野の実情を、公的な資料で確認して判断する

公認心理師の将来性は、期待できる面と厳しい面の両方があります。不安な点は、大学院や実習先の指導者にも相談しながら、一つずつ確かめて進めてください。

日本学術会議「公認心理師の国家的活用の在り方」、厚生労働省「令和8年度診療報酬改定(精神医療)」、厚生労働省「ストレスチェック制度・メンタルヘルス対策」も参考にしてください。