公認心理師の副業はできる?規程・公務員・確定申告

公認心理師の副業はできるのか。公認心理師法に禁止規定は見当たらず、可否は就業規則や公務員の兼業許可で決まります。副業の種類、20万円ルール、信用失墜行為の禁止との関係を整理します。
公認心理師の副業は、公認心理師法に副業を禁じる条文がないため、法律上は「資格があるから禁止」とはなりません。実際に左右するのは、勤務先の就業規則(公務員なら兼業許可)と、守秘義務や信用失墜行為の禁止といった職業上の義務です。この記事では、副業を始める前に確認する順番と、種類ごとの注意点を整理します。
この記事でわかること
- 公認心理師の副業が法律上できるのか、どこでつまずきやすいのか
- 就業規則と、公務員の兼業許可で確認するポイント
- 副業の種類(オンライン相談・執筆・講師・スーパービジョンなど)ごとの考え方
- 確定申告の20万円ルールと、勘違いしやすい点
- 信用失墜行為の禁止や守秘義務との関係
公認心理師の副業はできる?法律上の考え方
公認心理師の副業が「できるかどうか」は、資格の法律と、雇用や公務員の制度を分けて考えると整理しやすくなります。
公認心理師法に副業を禁じる規定はあるのか
e-Gov 法令検索で公認心理師法の条文を確認したところ、「副業」や「兼業」を禁じる、あるいは制限する規定は見当たりませんでした(2026-10-30 確認)。つまり、公認心理師だから副業ができない、という法律上の決まりはありません。
一方で、公認心理師には法律上の義務があります。信用失墜行為の禁止(第40条)、秘密保持義務(第41条)、連携等(第42条)です。副業をするかどうかにかかわらず、これらは業務のすべてに及びます。副業は「資格の外」の話ではなく、同じ義務を負ったまま行うものと考えておくのが安全です。
副業の可否を決めるのは勤務先のルール
副業ができるかどうかを実際に決めるのは、多くの場合、次の2つです。
- 民間や医療機関、学校法人などに雇用されている場合は、就業規則や雇用契約書の定め
- 国家公務員・地方公務員の場合は、法律に基づく兼業の許可制度
つまり、同じ公認心理師でも、勤務先によって答えが変わります。まずは自分の雇用形態と就業規則を確認することが出発点です。
常勤と非常勤で違いはあるのか
非常勤を掛け持ちして働くこと自体は、この職種ではめずらしくありません。ただし、掛け持ちも「副業」にあたるかどうかは勤務先の規程次第です。たとえば、主たる勤務先が「他の事業所での勤務は事前に届出」としている場合、非常勤の掛け持ちにも届出が必要になることがあります。「非常勤だから自由」とは限らないので、規程の文言を確認してください。
副業の前に確認する就業規則のポイント
就業規則の確認は、副業を始める前に最優先で行うことです。ここでは、見るべき項目を挙げます。
禁止・許可制・届出制のどれか
副業に関する規程は、大きく次の3つの型に分かれます。
- 禁止: 原則として他の業務に従事してはならない
- 許可制: 事前に会社の許可を得れば可能
- 届出制: 事前に届け出れば可能(会社が制限できる場合は限定される)
厚生労働省は、働く人が勤務時間外に他の会社等の業務に従事できることを前提としたモデル就業規則を公開しています。同省の「副業・兼業」のページによると、副業・兼業の促進に関するガイドラインは2018年1月に作成され、2020年9月、2022年7月に改定されています。モデル就業規則も2018年1月に、従来の「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という規定を削除して、副業・兼業の規定が新設されました。ただし、これはあくまでモデルです。実際に自分の勤務先がどう定めているかは、勤務先の就業規則で確認する必要があります。
禁止や制限が認められやすい場面
モデル就業規則の規定例では、会社が副業を禁止または制限できる場面として、労務提供上の支障がある場合、企業秘密が漏れるおそれがある場合、会社の名誉や信用を損なう行為がある場合、競業により会社の利益を害する場合などが挙げられています。公認心理師の副業では、次のような場面が特に問題になりやすいでしょう。
- 主たる勤務先のクライエントと副業先のクライエントが重なる
- 勤務先の業務で得た情報や関係を、副業に持ち込んでしまう
- 副業の時間が長くなり、本業の質に影響する
労働時間の通算と体調管理
雇用されて副業をする場合、副業先との労働時間の通算が必要になる場合があります。厚生労働省は「副業・兼業時の労働時間の通算」に関する解説資料を公開しています。勤務先から通算に関する確認を求められることもあるため、副業先の勤務日数や時間は正確に把握しておきましょう。対人援助は感情的な負荷が大きい仕事です。法令上の上限とは別に、自分の心身の余裕も計画に入れておくことをおすすめします。
就業規則に書いていなければ自由、とは限らない
副業の項目がなくても、服務規律や秘密保持、競業避止などの条項が副業に及ぶことがあります。収入が少ないから、無報酬だから問題にならない、と決めつけるのも避けたいところです。判断の基準は金額ではなく、本業への支障や利益相反があるかどうかだからです。
規程の読み方や運用に迷うときは、人事・総務の担当者に相談するか、社会保険労務士などの専門家に確認してください。
勤務先が副業を全面的に禁じている場合は、無断で始めるのではなく、規程の見直しや例外の扱いを相談する、副業に当たらない形(無報酬の活動など)にとどめる、勤務先そのものを見直す、といった選択肢を比べてください。
公務員の公認心理師は副業できる?兼業許可の基本
公務員の副業は、民間の就業規則とは別の法律で決まっています。ここでは条文を確認できた範囲で整理します。
国家公務員の場合
国家公務員法第103条は、職員が営利企業の役員、顧問、評議員を兼ねたり、自ら営利企業を営んだりすることを禁じています(人事院規則に基づく承認を得た場合は適用されません)。また第104条は、報酬を得て営利企業以外の事業の団体の役員、顧問、評議員を兼ねたり、その他いかなる事業に従事し、事務を行うにも、内閣総理大臣および所轄庁の長の許可を要するとしています。
自営の兼業については、人事院が2025年12月に制度の見直しを発表しており、2026年4月1日から、職員の知識・技能をいかした事業と、社会貢献に資する事業が新たに承認の対象になりました(人事院の報道発表で確認)。ただし、承認は事業を始める前に受ける必要があり、基準や時間の目安の細目は人事院の資料に示されています。自分の事業が対象になるかは、所属府省の担当部署に確認してください。
地方公務員の場合
地方公務員法第38条第1項は、職員が任命権者の許可を受けなければ、営利企業の役員等を兼ねたり、自ら営利企業を営んだり、報酬を得ていかなる事業や事務にも従事したりしてはならないと定めています。ただし書きでは非常勤職員が許可の対象から外されていますが、そこから短時間勤務の職を占める職員や、フルタイムの会計年度任用職員(第22条の2第1項第2号)は除かれています。非常勤だからといって一律に自由とはいえず、どの区分にあたるかは任用の形態によって変わります。自治体によっては、許可の基準や手続きを規則で別に定めていることもあります。
公立学校のスクールカウンセラーなどの場合
スクールカウンセラーなどの非常勤職として働く場合、任用の形態(会計年度任用職員など)や自治体の運用によって、適用される規定や手続きが変わります。ここでは可否を断定できません。自分がどの区分にあたるのかは、採用時の書類や、任命権者(教育委員会など)の服務規程で確認し、副業を始める前に担当部署へ問い合わせてください。
公務員の方は、「報酬を得る」「継続的に行う」といった実態があれば、事前に許可の手続きが必要になる可能性が高いと考え、必ず任命権者や人事担当に相談してから動いてください。無許可の兼業は、懲戒処分などにつながるおそれがあります。
公認心理師の副業の種類と注意点
副業の種類によって、守るべきものも手続きも変わります。ここでは、代表的なものを挙げます。
オンライン相談・カウンセリング
オンラインで個人の相談を受ける副業は、働き方の自由度が高い反面、守秘義務、記録の管理、緊急時の対応など、本業と同じ水準の責任を自分で負うことになります。オンライン相談の求人を探す場合は、オンラインカウンセラー求人の探し方と確認点も確認してください。
- 通信環境、録音・録画、記録の保管など、情報の取り扱いを自分で設計する
- 緊急時(自傷他害のおそれなど)の連絡先や対応の流れを決めておく
- 本業のクライエントが副業の相談に来た場合の扱いを事前に決めておく
- 医療行為にあたる診断や治療の断定はしない
主治医がいる人への支援では、公認心理師法第42条第2項により、主治の医師の指示を受けることが求められます。副業であっても同じです。
執筆・監修
記事や書籍の執筆、監修は、心理支援の対象者と直接向き合わない点で、比較的始めやすい副業です。注意したいのは次の点です。
- 事例を扱うときは、本人が特定されないよう加工しても、元の相談の内容を連想させないようにする
- 勤務先で得た情報を、そのまま素材にしない
- 実名や所属を出す場合は、勤務先の規程(広報・発信のルール)を確認する
日本公認心理師協会の倫理綱領(第11条)は、出版、講演、研修活動、各種通信媒体による情報発信などにおいて、専門家としての十分な配慮と節度を保つことを求めています。
講師・研修・スーパービジョン
大学や専門学校の非常勤講師、企業や自治体の研修講師、後進へのスーパービジョンなども、公認心理師の経験を生かせる副業です。
スーパービジョンを報酬を得て行う場合は、相手や所属先との間で、役割の範囲、守秘、事例の扱い方を明確にしておきます。事例の共有には、本人の承諾と個人情報の匿名化が原則とされています。
個人開業・カウンセリングルーム
個人で相談室を構える場合は、副業というより開業に近い形になります。広告の表現、個人情報の取り扱い、契約書など、副業より多くの準備が必要です。この点は別の記事で詳しく扱います。
副業の種類ごとの向き不向き
迷ったときの見極めの目安は次のとおりです。
- 時間の自由度が高いのは、執筆、オンラインでの単発の講師など
- 責任が重くなるのは、継続的な個別の心理支援
- 本業との利益相反が起きやすいのは、同じ地域・同じ領域で行う心理支援
自分の勤務先と競合しないか、クライエントが重ならないかを、始める前に必ず確認してください。
公認心理師の副業と信用失墜行為の禁止・守秘義務
副業の場面で、公認心理師法の義務を意識しておく必要があります。違反すると、副業だけでなく資格にも影響します。
信用失墜行為の禁止(第40条)との関係
公認心理師法第40条は、公認心理師の信用を傷つける行為を禁じる規定です(条文は「公認心理師は、公認心理師の信用を傷つけるような行為をしてはならない」)。副業をすること自体がこれにあたる、という意味ではありません。ただし、次のような行為は、副業の中で起きやすい問題として意識しておきましょう。
- 効果を断定する、根拠のない誇大な広告や宣伝をする
- 資格や経歴を実際以上に見せる
- 相談者との関係を、金銭や個人的な利益のために利用する
第32条第2項では、第40条、第41条または第42条第2項に違反したときは、登録の取消し、または期間を定めた名称使用の停止を命じることができると定められています。
秘密保持義務(第41条)と副業
第41条は、正当な理由がなく業務に関して知り得た人の秘密を漏らしてはならないと定めています。公認心理師でなくなった後も同様です。副業との関係では、次の場面に注意が必要です。
- 本業で知り得た情報を、副業先の業務や執筆、講演で使わない
- 副業先の情報も、同じ水準で保護する
- 複数の職場にいることで、同じ人の情報が両方に入らないようにする
多重関係を避ける
日本公認心理師協会の倫理綱領(第8条)は、原則として、要支援者等との間で専門的支援関係の範囲を超えた関係を結ばないことを求めています。本業の関係者が副業の相談に来る、副業のクライエントが本業の施設を利用する、といった形で、関係が重なることはあり得ます。受けるかどうかの判断基準を、あらかじめ決めておくと迷いません。
倫理や法律にかかわる判断は、所属先の規程や関係法令を確認し、必要に応じて上司、スーパーバイザー、専門家に相談してください。
公認心理師の副業の確定申告と社会保険:20万円ルールの注意点
副業で収入を得たときは、税金や社会保険の手続きが必要になることがあります。ここでは、国税庁と日本年金機構の説明の範囲で整理します。
給与所得者の副業と20万円ルール
国税庁のタックスアンサーによると、1か所から給与を受けていて、その給与の全部が源泉徴収の対象になる場合、給与所得・退職所得以外の所得の合計が20万円を超えるときは、確定申告が必要です。副業の所得が20万円以下であれば、所得税の確定申告は不要という扱いです。
ここでいう20万円は、収入ではなく所得(収入から必要経費を差し引いた金額)の基準です。また、給与を2か所以上から受けている場合は別の判断基準があります。
20万円以下なら何もしなくてよいわけではない
国税庁の同じページは、所得税の話に限られており、住民税の申告については触れていません。所得税の確定申告が不要でも、住民税には別の申告ルールがあり得ます。住民税の扱いは、お住まいの市区町村に確認してください。また、還付を受けたい場合などは、20万円以下でも申告するほうがよいことがあります。
業務委託と雇用の違い
副業先と雇用契約を結ぶのか、業務委託契約を結ぶのかで、税の扱いは変わります。雇用であれば給与所得、業務委託であれば事業所得や雑所得として扱われることが一般的です。どの区分になるかは、実態や契約の内容で判断されるため、迷う場合は税務署や税理士に確認しましょう。
複数の勤務先で社会保険に入る場合
雇用された副業先でも社会保険の加入要件を満たすと、2か所以上の事業所で被保険者になります。日本年金機構の案内では、本人が「所属選択・二以上事業所勤務届」を事実の発生から10日以内に提出し、保険料は各事業所の報酬月額に応じて按分されます。加入要件は事業所ごとに判断され、複数の事業所の労働時間は合算されません。実際の手続きは勤務先の担当者や年金事務所に確認してください。
副業は勤務先に知られる?住民税と情報発信の注意点
「公認心理師 副業 バレる」と調べる人は多いのですが、隠すことを前提にするのは得策ではありません。副業が勤務先に伝わる経路としては、住民税の通知、社会保険の手続き、SNSやブログでの発信などが一般に挙げられます。どれが実際に起きるかは、副業の種類、所得の区分、自治体の運用、勤務先の事務の進め方で変わるため、一概には言えません。住民税の納め方については、お住まいの市区町村の窓口に確認してください。
確実なのは、就業規則に沿って、必要な許可や届出を先に済ませることです。発信についても、所属先や担当しているクライエントが推測できる書き方は、守秘義務の面からも避けてください。
副業を始める前のチェックリスト
最後に、ここまでの内容を、始める前の順番に並べ直します。
- 勤務先の就業規則(副業・兼業の項)を読む。公務員は兼業許可の手続きを確認する
- 禁止なのか、許可制なのか、届出制なのかを確認し、必要な手続きをする
- 副業先の契約が雇用か業務委託かを確認する
- 本業のクライエントや業務内容と重ならないか確認する
- 守秘義務、記録の管理、緊急時の対応の方針を決める
- 収入の見込みと、確定申告や住民税の扱いを確認する
- 広告や発信の表現を、効果の断定や誇大表現がないかの視点で見直す
よくある質問
Q. 公認心理師は副業できますか?
公認心理師法には副業を禁じる規定は見当たりません。ただし、勤務先の就業規則や公務員の兼業許可制度によって、可否や手続きが決まります。まず自分の勤務先の規程を確認してください。
Q. 公務員の公認心理師が副業をするには?
国家公務員法第103条・第104条、地方公務員法第38条により、営利企業の役員等の兼務や自営、報酬を得る事業・事務への従事には、許可や承認が必要になるのが原則です。非常勤の場合は任用の形態によって取り扱いが異なるため、断定せず、任命権者や人事担当に確認してください。
Q. 副業の収入が20万円以下なら確定申告は不要ですか?
国税庁の説明では、給与を1か所から受けていて全額が源泉徴収されている場合、給与所得・退職所得以外の所得の合計が20万円以下であれば、所得税の確定申告は必要ありません。ただし、20万円は収入ではなく所得の基準で、住民税の扱いは別です。市区町村に確認してください。
Q. 公認心理師が副業でオンライン相談をしても問題ありませんか?
法律上、禁止はされていませんが、守秘義務、記録の管理、緊急時の対応、主治医がいる場合の指示(第42条第2項)など、本業と同じ義務を負います。勤務先の規程に抵触しないかも先に確認してください。
Q. 副業は信用失墜行為にあたりますか?
副業そのものは、信用失墜行為にあたるわけではありません。効果の断定、誇大な広告、資格や経歴の偽り、相談関係の利用など、公認心理師の信用を傷つける行為が問題になります。判断に迷うときは、職能団体の倫理綱領を確認し、上司や専門家に相談してください。
Q. 公認心理師の副業は、勤務先にわかってしまいますか?
住民税の通知、社会保険の手続き、SNSなどの発信から伝わることがあるとされますが、実際にどうなるかは自治体や勤務先の運用、副業の形態によって異なります。知られるかどうかを基準にせず、就業規則に沿って許可や届出を済ませておくのが安全です。住民税の扱いは市区町村に確認してください。
まとめ
公認心理師の副業は、資格の法律ではなく、勤務先のルールと職業上の義務の2つで決まります。
- 公認心理師法に副業を禁じる規定は見当たらない。可否は就業規則(公務員は兼業許可)で決まる
- 副業の種類ごとに、守秘義務、記録の管理、緊急時の対応、多重関係の回避を事前に設計する
- 収入が出たら、20万円ルール(所得税)と住民税の扱いを確認し、迷えば税務署・市区町村・税理士に相談する
公認心理師の副業は、先に確認する順番を守れば、経験を広げる選択肢になります。まず自分の勤務先の規程を読むところから始めてください。
参考にできる公的な情報は次のとおりです。公認心理師法(e-Gov 法令検索)、厚生労働省 副業・兼業、国税庁 タックスアンサー No.1900、日本公認心理師協会 倫理綱領、人事院 自営兼業制度の見直しについて、日本年金機構 複数の事業所に雇用されるようになったときの手続き。



